あの日、空は曇っていた。
太陽の光は雲に阻まれ、街はいつもより薄暗かった。
心なしか道行く人の顔も暗かったように感じる。
だが曇りの日などよくあるだろうと、私は気にせずレンガで出来た赤い道を歩いた。
お昼を過ぎた頃だっただろうか。
地が揺れだした。
周りの家々は砂で作られていたのかと思ってしまうほどすぐさま崩れだした。
状況が理解できない。命の危険すらも感じられない。ずっと変わらなかった、変わらないと思っていた風景が一瞬で砕かれていった。
前から人が走ってくる。殺人鬼にでも追われているぐらいの恐怖が顔に現れている。
我に返った。
動かなければ死んでしまうと今さら気づいた。
すべてが崩壊していく。
私は今まで呑気に歩いていた道を今度は恐怖に駆られながら走った。
いつもより風が強い。
草木がざわめく。地面が震える。
荒らしが出現した。
あの野郎ブチころしてやる!