魔女との出会い

「なぜ呼ばれたかわかっていますよね、ブライト博士？」そうサイト管理官に問われたジャックブライトは、ニコニコしながら冗談のような答えを返した、「君とお話しするため？」

管理官はため息をつき、キレ気味に答えた。違いますよ、減給を勧告するためです、また財団の資金を私的に使いましたね？」

「別にいいじゃないか、沢山あるんだし。」ブライトは全く反省していないようだ。　

「財団の資金を人類を異常から保護するためにあるんです。アベルに殺されたあなたならご存知でしょう。あの化け物共は我々の設備などたやすく破壊します。資金はいくらあっても足りません。」管理官は頭を押さえなが言った。

「あなたが問題行動を起こすたびにO5に呼び出される私の身にもなってください。」

「よかったじゃないか、O5になんてそう会えるものじゃない。いい経験だね。」

管理官は我慢限界を迎えブチ切れた。

『私は目をつけられてるんです、あなたのせいで！！財団の最高意思決定機関に！！胃が持ちません！！」

管理官はストレスで疲れ切っているようだ。無理もない、ただでさえこのサイトには収容違反を繰り返す682がいるのだ。オブジェクトの管理だけで手一杯だというのに、財団の問題児であるブライトの対処もしなければならないのだ

「先月も682が収容違反したっていうのに、289の捜索部隊に人員を送れなんてO5も無茶言いますよね」

減給勧告のはずが完全に愚痴を言っている、サイト管理官とはいえこの男はまだ若いのだ。

話を聞いていたブライトが真剣な声色で質問をした。

「む、289は収容違反を起こしたのか？彼女は昏睡状態のはずだが」

管理官が答える。

「ええ、サイトが襲撃されたんです。その際289が強奪されたとのことです」

「ふむ、しかしそんなことになればO5評議会がすぐに対応するはずだ、彼女の力は世界を滅ぼしうる。」

「ええ、すぐに機動部隊が派遣され、襲撃者の拠点は制圧されました。しかし、２８９は消失していたそうです」

「ない話ではないな、彼女の能力なら月へも一瞬で移動できる、なるほど。それで監督評議会命令が下ったわけか。」

「ええ、出動可能なすべての機動部隊を動員し２８９を回収せよと」

「で、人手が足りないからこのサイトの警備職員も寄越せというわけか。大変だねえ、君も。」

「問題行動を控えていただければ少しは楽なのですが」管理官がブライトを睨む。

「しかしそこまでする必要があると、私には思えないんだがねえ。」

「どういうことですか？」

「君は289になぜ今のような処置が取られているか知っているかい？」

「コンドラキ博士が自身を殺害しようとしていると誤認した結果、影響を受けた博士に殺人衝動が発生したから..ですよね？」

「ああ、あの事案を受け財団は、意識がある状態の２８９を管理するのは不可能だと判断した。しかし、考えてみたまえ、あの時２８９は自身の能力に恐怖しただろう。再び目覚めた今、すべてなかったことにしようと能力を使い自己終了してもおかしくない。」

ブライトはため息をつき、続けた。

「太陽に射出しても生きて戻ってくる怪物を飼っている財団が、子供の世話もできないとはねえ。」

「いやいや、博士相手は異常存在ですよ？普通の女児のようにいくとは思えません。」

ブライトは少し間を置いて答えた。

「そうだね、彼女は異常存在だ。君は素晴らしい職員だね、評議会も君を気に入ってるだろう。じゃまたね。」ブライトはそう言って管理官室を出て行った。

「ああ、ちょと博士！？」呼び止めた時にはいなくなっていた。全く、困った人である。

ミヤがその少女を見つけた時、最初は見間違いだと思った。突然道路に現れ、その瞬間に雨が降ったからだ。

しかし倒れている少女を放って置けず、駆け寄ったのである。

「ちょっと大丈夫！！？」返事がない、意識を失っているのだ。怪我がないか体を観察するが一瞬思考が止まった。

「足が消えかかっている」のだ切れているのではない。消えかかっている。人間ならそんなことはあり得ない。ならば幽霊？いや体温がある。状状況が飲み込めないが、一つ分かることがある。この子は生きている。

ならば放っておいたら死んでしまうのではないか？それは、ダメだ。絶対に嫌だ。理由はない、嫌だから嫌なのだ。「ダメ！消えないで！」少女の手を握り、必死に祈る。神様、どうか、どうか、この子を助けてください。しばらくして雨が止み、少女の足が戻っていた。

「よかった」言葉と共に涙が溢れた。

後書き

今回は結構な長文になりました。