#8 デド
「単刀直入に言うわ。まず、あのドアを開けたのはルーなの。私はなぜルーがあのドアを開けれたのか、開けようと思ったのか不思議でならないの。私はその場に居合わせただけだから。私にそのこと聞かれても困るわ。私だって知りたいんだから。」
キヲルに負けず私は笑顔で返した。
「罪逃れかい?」
「信じる気がないなら私、もう行くわよ。時間の無駄だもの。信じる気がない人を説得するなんて。」
マーレーの目はキヲルと私の間を行ったり来たりしている。
「それにしてもどうしてあなたはそんなに私に濡れ衣を着させたいの?」
キヲルの目がきらりと光った。
「理由が分からない?ハッ、教えて差し上げよう。仲間の悪事の摘発は昇格物なのさ。」
キヲルは私の顔の前で人差し指をチッチッと動かした。
今までキヲルと私のことを交互に見ていたマーレーの目がキヲルから動かなくなった。もちろん私の目も。
「昇格すれば突撃隊員に選ばれることも、ない。自分で選ぶのだからね。僕の父上もこうやって生き残ってきたんだ。生き残るには仲間の助けも必要なのさ。」
私はすっかり呆れてしまった。
同じ屋根の下にこんなことを考えている奴がいるなんて。
「申し訳ないけどあなたにとっての仲間と私にとっての仲間はちょっと違うみたい。」
「おっ俺もちょっと違う。」
キヲルをじっと見つめていた目を動かしてマーレーの目は今度は私を見つめた。
「俺にとっての仲間ってのは一緒に笑いあったりする奴だ。」
キヲルは急に冷たい目になると「あぁ、そうか。そいつらといると良いさ。俺は生き残る。死ぬのはお前だ。」とマーレーに言い放った。
「いや、俺は絶対生き残る。」
キヲルは呆れたように頭を振ると元来た廊下を背を向けて歩き出した。
「俺、あんな奴だと思わなかった。」
マーレーはキヲルが向こうの角を曲がってからそう口を開いた。
きっとデドによる閉ざされたシェルター空間、そしてデドによる日々の恐怖が彼をそうさせてしまったのだろう。
私はそう思ったがマーレーにそう伝えるのはまた今度にしようと思った。