ELGAMA #14 ルミアナ編 #2 真実
レイスは、暗い暗い空間に漂う立方体の中に入っていた。
ここに来て、もう何日経つだろうか。
数十デラは過ぎただろう。
何もない空間で、体もなく、魂の状態だ。
退屈すぎるこの空間で、ごく僅かに、楽しいことがあった。
一つは、時々、元の体に戻れることだ。
何事もなくここで過ごしている時、突然、外の光景が目に入ってくる。
エリントと戦う時は、たまたま元の体に戻ることができ、エリントを殺さないで済んだ。
もう一つは、唯一の話し相手がいたことだ。
アケラル•ヒュレルクアン•ドラゴン(レイスはヒュレルと呼んでいる。)とは、しょっちゅう話していた。
アケラルの力は、フォーサーは使えない、使うには其方の意思がなければいけない。とヒュレルが言っていた。
レイスは、こうして未だにエリントの助けを待っていた。
「いつから分かった?」
フォーサーが言う。
「最初から、ずっと。今までのは、全てお前を油断させる為に泳がせてたんだ。」
エリントがそう言うと、フォーサーは、なぜか、勝負あったな、という顔で言った。
「おいおい、俺がいつから入れ替わってるかも知らないくせに、最初から知ってたっておかしく無いか?」
フォーサーはニヤリと笑う。
「お前は、レイスの村が焼かれた時から、既に入れ替わっていた…違うか?」
フォーサーは、先程とはまったく違う顔を浮かべた。
冷酷な顔だ。
「ご名答、だが、なぜそんな結論が出せる?見てたのか?」
すると、レイスは言った。
「あぁ、見ていたとも、レイスに人影が近づくのも、そして、その人影の目が確かに見えたこと、エンペラント•スケーラーはフードを頭まで被るのが義務付けられている。そして、お前の作戦も分かってた。」
フォーサーは溜息をついて言った。
「つまり、全てお見通しだったってことか、参ったな。」
エリントは憎悪の顔を浮かべている。
「じゃあ聞くが、俺の作戦ってなんだ?」
「レイスと入れ替わり、俺を騙し、油断させて、寝首を狩る、と言った感じだろう。」
「またもご名答だ。」
フォーサーは気持ちの篭っていない拍手をした。
「でも、これはなんだろうな?エリント。」
フォーサーは薄笑いを浮かべながら、なにか紙切れを取り出した。
「ふむふむ、『先日言っておりました、プレク村人ですが、無事捉えました。計画通り行っています。つい先程、イリエンセの研究所に案内したところです。やはりプレク村人は簡単に騙されました。まだ私のことを仲間だと思っているようです。』か。お前、これを真帝王様に送るつもりだったんだろう?レイスを真帝王様に売ろうとしてるのも同然じゃないか?」
「その例のプレク村人というのは確かにレイスのことだ。それは真帝王に言い訳として送ろうとした物だ。お前に見られるか、それとも本物のレイスに見られて、証拠として突き出されるだろう、と予想できた。」
フォーサーは面白くないと言ったような顔をした。
「さあ、早くレイスを返せ!」
「返せ?お前、返せとかカッコつけてるが、レイスのことを何も知らないだろう?真の彼と接したこともないだろ?なのに返せなんてよく言えるよ。」
エリントはその場で固まった。
すると、フォーサーはここぞとばかりに畳み掛けた。
「レイスだって、お前のことを何も知らない。お前なんか、認識していないんだ。」
「お前は信用を失っているんだよ。」
「お前は…」
「1人なんだよ。」
エリントは悔しそうに拳をギュッと握った。
爪が食い込んでいる。
フォーサーは勝ち誇った顔をしている。
「…それは違う。」
「あ?」
フォーサーの勝ち誇った顔が消え去った。
「レイスのことを、事細かく知っているわけじゃない。知らないこともある。レイスはずっと前からお前と入れ替わっていた、今までのレイスは全てお前が演じてた。だが、ルガンデの戦いの時、お前が俺を殺そうとしてるなら、誰があんな絶好のチャンスを見逃すだろうか。あの時はレイスの意思が通り、俺に命中はしないように調整した。だが、お前は途中でレイスの意思を封鎖し、俺に当たるよう打った。打つ瞬間、少し光線が横にズレるのが分かったんだ。その広大な心、それこそがレイスなんだ。」
ファーサーは黙って聞いていた、というより言葉が出てこないのだろう。
「絶対レイスを返して貰うぞ。」
エリントがそう言うと、辺りが白くなった。
そして、気付いた頃には、そこは宿ではなかった。
辺り白世界の、雲のようなふわりとしたものにいた。
そこに立っていたのは、ファーサー、エリントだ。
「ここはどこだ?移動させたのか?」
「あぁ、宿で戦ったら、宿が無茶苦茶になる、しかも、騒動が広まってしまうからな。」
ファーサーの質問にエリントが答えた。
そして、エリントが剣を抜いた。
「ここで、必ず、お前を倒す!」
エリントの目には赤い炎があった。
怒りと憎悪の炎だ。
14話↓