自作短編小説『心の持ち方』

努力しないで楽だよね、何度言われたことだろうか、だが私はその言葉を聞く度に口角が上がりそうになってしまう。だって可笑しいと思わないかい、私の努力や苦労を他人の物差しで図られ、挙句の果てには口出しまでされる始末。

ええそうですとも、私は人に話せる程の努力をしたことが一度たりともございません、努力とやらをしたところで何が得られるのでしょうか、疑問でなりません。学力も体力も人付き合いも、私の思う必要最低限で済ませることの何がいけないのでしょう。努力の苦痛に見合う対価が与えられる保障がない限り、苦手なものは苦手なままで放棄し、例え才能があると持て囃されようとも、無駄だと解り切っている行動を繰り返します。

ここで貴方に質問です。努力の基準とは何でしょうか。

私の思う努力とは、やりたくもないことを他人の為にすることです。例を挙げるなら、人に優しくできないということです。見ず知らずの人が目の前で転んだとしても、特別仲が親しい訳でもなければ、基本的に見て見ぬ振りをします。誰かに直接助けを求められたとて、気分が乗らない限りは笑顔で断ります。

薄情者だと言うならばどうぞご自由に、私からしたら親しくない方に問題があると思っていますので。

責任を押し付けたっていいじゃないですか、問題が解決しないと言われても、少なくとも私の中ではその程度の事なのです。いえ、訂正させて頂きますね、そもそも問題など起こらなかったのです。

嫌なことでも受け入れろと言われても、人に意見を押し付けられる人だけで責任を負ってください。私の思考回路が周りと多少違うのは認めますが、それが可笑しいと認識したことはありません。飽くまでも私の考えは私の考えであって、人に伝えることはあっても、押しつけることはないからです。

拙い文章で自分自身を肯定しているのを滑稽に思う人が居たとしても、それはその人個人の考えであって受け入れる必要性は勿論、聞き入れる義務すらないのです。

ところで、貴方は身勝手な意見を述べる人間と、理解不能な意見を押しつける人間に出会った際は如何しますか、回りくどく抽象的な質問で困った方もいるのかも知れませんので、もう少し短くすると、貴方は何で心を支えますか、ということです。此方も解り難いかも知れませんね。

参考程度に私の考えを述べるならば、それは責任転換をすることです。人の都合や体面など関係なく、私を肯定する為に責任逃れをします。勿論相手は私の思う下の人間です。立場が上の人や、親しい間柄ならば無駄な争い事は避けますが、特に困らないであろう人や、何も言い返さないであろう人には当たり前の様に責任を擦り付けます。

例え外道だと言われようとも、私にとってはその程度の人間である向こう側にも責任があると思っています。支離滅裂で出鱈目かも知れませんが、自身を肯定する為ならば他人を否定するのは、多くの人がやっていることだと思います。その度合いが違ったとて、誰しも噓を吐いた事がある様に、それが悪だと決めつけられたら、全てが否定されてしまうのだと思います。

このことを態々誰かに伝える必要はないのかも知れませんが、その責任は私にはないので如何にも出来ませんし、するつもりも御座いません。

私が産まれたのは母親が産んだからであって、母親が産まれたのは祖母が産んだのであるように、本当の意味での責任がないなら、形だけの責任を誰かに押し付けてもいいのではないでしょうか。

誰かの為にならなくとも、今の私を肯定出来ればそれ以外のことは必要ありません。