ELGAMA #29 アリゴ編 #8 ブレデウル
「ミア、どうだ調子は。」
「うん、すっかり良くなったよ!」
今朝、ミアの体調はすっかりよくなった。
「すっかりよくなったな、よかった。」
フェルグが言った。
「んじゃ、オレらは番人倒してくるよ。」
友達の家に遊びに行くような調子でエリントは言った。
「ちょ、ちょっと待つんだ。」
三人が小屋を出ようとすると、フェルグが呼び止めた。
「なんです?」
「レイスくんは武器がないようだから、これを渡しておくよ。」
そう言ってフェルグは、なんの変哲もない剣を差し出した。
「あ、ありがとうございます。」
「さあ、気をつけて行っておいで。」
そして、三人はフェルグの小屋を後にし、森へと入って行った。
気が生い茂る森を歩き、進んで行く。
「ミアって、なんであんなに完治まで時間がかかったの?」
無言では退屈なので、レイスはなにか話を持ちかけることにした。
「うーん、なんでだろうね。」
ミアが苦笑いをして言った。
「あれだ、オレがいっぱい光雑法を当てたから人体の中にダメージが入ってたんだ。特に最後の闇とかはな。」
エリントが説明した。
怪我をさせた張本人なため、当然だ。
「そうなんだ。別に最後以外は頑張って耐えれたんだけど、あれってダメージ入ってたんだね。」
ミアがあっけらかんと言ってのける。
「あんだけ食らってまだ立てるって、アンタほんとバケモンだぜ。」
そんな会話をしながら歩いていると、ついに森が開ける所まで辿り着いた。
「さて、ここか。」
神殿は、まるで神殿の中を守ろうとするかのように蔓を垂らし、完全に自然に溶け込んでいた。
辺りには緊張感が漂う。
聞こえるのは、風で木の葉が擦れる音のみ________
エリントは神殿の扉に手を触れて、押し出した。
扉はあまりに不自然すぎるほどに無音で開いた。
中もまた自然に溶け込んでいた。
レイスは一つ不自然なことに気付いた。
「エリント、なんでここの神殿は一部屋しかないの?奥にゲートもあるし。」
エリントは頭を掻いて答えた。
「あれ、おかしいな、番人がいないぞ。どこ行ったんだ。」
「でも、番人がいなくてもそのまま次に行けるし、いいんじゃない?」
レイスがそう言うと、エリントは呆れた顔でレイスを見つめた。
「おいおい…アリゴの番人を倒さねえとピルミに行けないんだぜ?…行きたくないかもしれんがな。」
「あ、そっか。」
だが少し待っても番人は来なかった。
「来ないし、もう行こうよ。」
「そうだな、仕方ないが…」
そして三人が足を踏み出した瞬間だった。
大きい音が背後から聞こえた。
後ろを振り向くと、神殿の扉が閉まっていた。
神殿には窓がないため、光を遮られてしまった神殿内は真っ暗になった。
「なんてこった、いない訳じゃなかったのか。」
すると、何故か神殿内がじわじわと明るくなっていった。
明るくなるにつれ、中央に何かがいるのが見えた。
「!! こいつだ、こいつが…」
中央に立っているのは、緑色の筋肉がありガッチリとした体に、ドラゴンのような頭が二つ、そして大きな剣を持っており、おまけに少し浮いている、なにかだった。」
「…ブレデウルだ。」
ブレデウルはその場で大きく咆哮した。
そして、人間のような声で話し始めた。
「…人間三名、殺そうか、それとも殺そうか、それを決めるのは汝の実力のみ。」
ブレデウルは剣を振るった。
剣から炎が出て、レイスたちに向かって飛んできた。
レイスが咄嗟によける頃にはもう次の攻撃が来ていた。
黄色い球のような物体が飛んで来ていた。
レイスたちは回避に必死で攻撃をすることができなかった。
「やばい、強えぞアイツ。」
エリントが言う。
その間にもブレデウルは攻撃を続けていた。
だが、突然攻撃の手が緩まった。
体力がなくなったのだろう。
すかさずエリントが光雑法を放つ。
剣から飛び出した炎は、燃え上がりながら直線状に飛び、ブレデウルに向かった。
だが、炎はブレデウルに当たった瞬間に、その硬い皮膚に弾かれてしまった。
「なっ…」
エリントが口をあんぐりと開けた。
すると、ミアが、ブレデウルの攻撃の境目で剣を振るった。
剣から風がもの凄い速さで飛び出し、ブレデウルに当たった。
風はブレデウルの肌に少し傷をつけたところで消え去った。
ブレデウルの攻撃がまた激しくなった。
攻撃を避けるだけの一方的なターンが続く。
すると、ブレデウルは突如走り出し、エリントの方へ向かった。
「な、なにっ…」
エリントが剣を構える。
ブレデウルは剣を力いっぱい振った。
エリントの剣が甲高い音を立てた。
ブレデウルは高速で次の攻撃をする。
エリントも高速で剣を弾き、ダメージを免れる。
すると、ブレデウルは剣を真横に向け、力を溜めた。
そして、思いっきり剣を横に振り、渾身の一撃を放った。
その衝撃は剣を伝って手にまで伝わった。
剣は横に弾かれそうになるも、エリントはなんとか持ち直した。
だが、今の攻撃でエリントの体勢は大きく崩れた。
ブレデウルは容赦なく上から剣を振り下ろした。
エリントは攻撃を剣で弾かず、少しでもダメージを減らそうと横に飛び退いた。
案の定、回避は間に合わず、剣はエリントの背中を斬りつけた。
「っ!…」
エリントが目を見開いた。
背中からは血が溢れ、エリントはその場に倒れ込んだ。
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