ELGAMA #30 アリゴ編 #9

4 2022/01/18 16:51

「エリ…」

レイスがそう呼びかけることのできる時間はなかった。

 ブレデウルは今度はレイスに矛先を変えた。

レイスはブレデウルの攻撃を咄嗟に剣で防いだ。

剣は甲高い音と共に小刻みに震えた。

レイスの手は痺れ、剣を握る力が弱まった。

 ブレデウルは次々に攻撃を繰り出す。

そしてレイスは次々に攻撃を防ぐ。

 だが、次第に攻撃を防ぐことができなくなってきた。

無理もない、レイスよりブレデウルの方が体力は断然上だ。

 しかも、レイスよりも剣捌きが上手いエリントが負けたのに、勝てるはずがない。

剣を握る力が弱まってしまったせいもあり、相手が有利な状況に陥った。

ブレデウルの攻撃で、ついに剣がレイスの手を離れた。

 剣はカランカラン、と虚しく音を立て、転がった。

ブレデウルが再び剣を持ち上げる。

レイスは目をギュッと瞑った。

 ザクッと音がなり、胸から腹にかけて、激痛が走る。

幸いにブレデウルの剣は、昔からずっと使っているせいか、切れ味が悪かった。

 そのため、体が真っ二つに切れる、なんて悲劇は起こらなかった。

三人中二人がダウン、という最悪な状況で、しかもミア一人で、どうやって勝てというのだろうか。

目を開ける体力も残っていないため、レイスはじっと辺りの様子を聞くことにした。

 すると、ブレデウルの声が聞こえた。

「汝らの実力、計り知れた。汝ら三人のうち、二人は我が倒した。もう戦う必要はない。」

沈黙が訪れた。

 ミアの息遣いがここまで聞こえてくる。

「去れ。」

ブレデウルが言い放った。

 力を振り絞り、目を開けると、もうブレデウルの姿はなかった。

タタタタ、という足音が聞こえた。

「エリント、大丈夫?エリント?」

エリントの応答は聞こえなかった。

「レイスも大丈夫?」

「うん、なんとか。」

「よかった、エリント、ちょっと待ってね。」

突然、レイスの閉じた目蓋の隙間から光が入り込んできた。

と思うと、すぐに消えてしまった。

「エリント、具合はどう?」

すると、驚きの答えが返ってきた。

「ああ、ありがとう。なんとか大丈夫だ。」

それは、エリントの声だった。

 レイスが混乱していると、また足音が聞こえ、大きくなっていった。

ミアが近くにきたようだ。

「レイス、歩けそう?」

「いや、歩くどころか動けない。」

「分かった。今治してあげるから…」

________『治す』?

レイスの中で疑問が起こる。

 エベウプでも持っているのだろうか。

すると、頭を誰かに持ち上げられた。

 そして、なにか柔らかいものの上に置かれた。

ミアが何かを呟いた。

 すると、また強い光が発生した。

先程より眩しく、まるで神殿から外に出たようだった。

そしてまた、すぐに消えた。

「もう大丈夫?」

頭をそっと持たれ、また硬い地面に置かれると、ミアが言った。

 レイスは立とうとしてみた。

すると、あっさり立てた。

目も開けてみた。

 あっさり開いた。

「すごい!治ったよ!」

だが胸元を見下ろしてみると、まだ切られた後が残っていた。

「でも、ここの傷はこのままなんだね。」

「ああ、そこは、私が力不足で治せなくて…ごめんね。」

力不足、ということはエベウプを使ったのではなさそうだ。

「どうやって治したの?」

すると、ミアは苦笑いして言った。

「えっと、昔なんだけど、ちょっとだけ回復魔法を教えてもらって、完全回復まではできないけど、少しだけなら回復できるようになって…」

「えっ?そうなんだ。いいな。」

ミアと話していると、後ろから足音が聞こえた。

「お二人さん、オレを忘れないでくれよ。」

エリントだ。

「良かったなレイス、ミアに膝枕されて。」

エリントがニヤニヤしながら言った。

「え?膝枕?」

レイスは咄嗟にミアの方を見た。

 女の子に膝枕をしてもらうというのはさすがに照れる。

「あ、あれは、ただ…近付けないと、近づけたかっただけで、あ、そ、その…」

ミアがしどろもどろに言う。

 

「知ってる、さ、早く出ようぜ。陽の光を浴びたいだろ?」

 エリントの言う通り、出た方がよさそうだ。

またブレデウルが出てきてしまっては大変なためだ。

 レイスたちは神殿の扉(いつの間にか開いていた)を開き、外に出た。

辺りが真っ白になり、何も見えなくなったかと思うと、陽が差し込む森の風景が再び現れた。

「う〜〜〜ん、は〜、やっと外だ。」

エリントが大きく伸びをして言った。

「さて、ここからどうすりゃいいと思う?」

エリントが後ろを振り返り、言った。

「どうするって、まず傷を治さないといけないんじゃない?傷があったら戦おうにも戦えないし。」

「それはそうだが、この辺にエベウプが生えてでもしないと、無理だろ?」

それはそうだな、とレイスは同感した。

「なら、フェルグの家で手当てしてもらえば…」

「へぇ、あの無様な負けっぷりをフェルグに報告できるんですかねえ。しかもフェルグにも迷惑だろ。」

レイスはさらに考え込んだ。

「でも、一番いいのはエベウプを探すことだとオレは思うな。フェルグだけは勘弁してくれ。」

「ならどこを探せばいいの?」

「それは分からん。」

エリントがあまりにもきっぱり言うので、レイスたちは驚愕した。

「じゃ、どうすれば…」

「まあ、一か八かその辺を探せばいいだろ。」

そして、途方もないエベウプ探しが始まった。

 痛む体を引きずり、エベウプを探すも、見つからなかった。

するとレイスは、あるものを思い出した。

ポケットから、ある本を取り出す。

 いつかに手に入れた、エルガマ辞典だ。

無意味に登録されただけではなく、何か機能があるはずだ。

 レイスは辞典を開いた。

登録されているのは、エベウプとエベラントの二つのみだ。

探るように辞典を弄っていると、急に辞典から光が溢れた。

「な、なんだ?何してる。」

光に目を細め、

エリントが言った。

 光は空中に飛び出し、辺りに散った。

よく見ると、辺りの植物に向かって飛んでいる。

 レイスはすぐ側にあった光った花を見た。

それは、エベウプだった。

「エリント!これ、エベウプだよ!」

「おいおい……そんな訳が…マジかよ、嘘だろ?」

エリントも側にあった光る花を摘んだ。

 それも、エベウプだった。

「お前な、そういう便利なモン持ってんならもっと早く言ってくれよな。」

 収穫したエベウプを使い、レイスたちは治療を完了させた。

「おお!体が軽い軽い!」

エリントが嬉しそうに言った。

次話↓

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その他2022/01/18 16:51:18 [通報] [非表示] フォローする
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アリゴ編はまだ長引きそうです、、


2: 桃太郎 @j402210952022/01/19 22:01:45 通報 非表示

>>1
おぉ!


>>2
番人の強さミスったかもw


4: 桃太郎 @j402210952022/01/19 22:12:52 通報 非表示

>>3
wwww


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