小説 / いらない子。
※胸糞悪いです。見たくない方は見ないことを全力でお勧めします。
私は今、妊娠している。
腹の子は、私が結婚を前提に付き合っている彼の「父親」との子だ。
いきなり後ろから抱き付かれ、服を脱がされ、望まない性行為を強いられた。
こんな気持ち悪い爺に抱かれ、殺したいほど憎らしいはずなのに。
自分の意思に反した行為をされたにもかかわらず、体が反応してしまった自分がとても許せなかった。
何か月も経てば、もっとお腹が大きくなっていくだろう。
この子供を今すぐ殺したい。憎らしい。死ね、死ね!!!
あたしは何もしていない、あの爺がこんなことをしなければこの子だってできなかった!!!!
許せない。けど、何が許せないのか分からなくて。混乱して涙があふれた。
それから、何時間経っただろうか。もう泣き疲れてしまった。気が付くと、原形の保っていない人間の死体が目の前にあった。
血だらけの床とナイフ。私の手も服も血だらけだ。少しずつ理解が追い付いていく。
私は、「腹の子の父親」を殺したんだ。
その答えに罪悪感はなく、ただすっきりとした気分が残った。
あとは腹の子を殺すだけ。一人殺れたなら、もう簡単なことだろう。
曖昧な精神状態のまま、私はすでに血だらけのナイフを握った。
その時、ガタッと音がした。音とともに思考が停止した。誰かいる。
ゆっくりと振り返ると、そこには
私が結婚を前提に付き合っている「彼」がいた。
彼は原形の保っていない死体を見て、すぐに自分の父親だと分かったのだろう。膝から崩れ落ち、血だらけの床に座り込んだ。
そんな彼の絶望的な顔を見て、私は正気に戻った。
彼は自分の実の父親を殺した犯人が私だという信じがたい事実を目の当たりにしてしまった。さぞかし私が憎いだろう。
今私が犯行の理由を説明したとしても、彼に伝わるとは到底思わなかった。
感情がうまく言葉にできなくて悔しい。涙だけ、ボロボロとあふれ出した。
「ごめん、ごめんね」と泣きながら訴えた。許してはもらえないと分かっていても、最低限のことはしたかった。
彼がゆっくりと近づいてくる。これでお終いなのだと私は思った。
けれど彼は、私をぎゅっと抱きしめてくれた。
意外な行動に私は混乱する。
「ごめん」
彼は小さな声でそう言った。続けて、
「この腹の子は、お父さんと君の子なんだよね、」
と言った。なぜ彼がそのことを知っているのか不思議だった。
そのあと、彼は私が「彼の父親」に犯された数日後、一緒に酒を飲んだと言っていた。酔っている時、父親が「お前の嫁を犯してやった」と自慢げに彼に伝えたという。もしかして妊娠してしまうのではないかと私を心配して、しばらく私の様子を見ていたと教えてくれた。
安心して、ほっとした。分かってもらえてよかった。
私は本当にこの人と結婚できるのが嬉しい。
そうやってニコニコしていられるのもつかの間、私は殺人犯だ。警察に見つかれば私は逮捕され、社会的に死ぬ。
それを逃れるべく、私は彼と手を組んだ。そしてこの事件が公にならないよう警戒しながら死体を山に埋めた。
彼の親族はどうやら父親しかいないらしく、あまり面倒なことにはならなかった。
手を組むときに彼と約束をした。「腹の子は殺さず、「彼と私の子」として育てる」、「この出来事は二人だけの秘密」ということを。
人生の最後の日まで共犯だった私たちは、何よりも強い絆で結ばれていた。
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