灰被り【総選挙用超短編ホラー】【未完成】横画面で読んで下さい
『埃』
それは世界で最も身近な汚物。
机の隅、扇風機の羽、忘れ去られた未読の古本。普段気が付いていなくとも『それ』は確かな悪意を持ち、人間の側に這い寄ってくる確かな穢れ。
人はただ、その瘴気に当てられない様気を付けるしかない。
***
この小説を読む貴方へ、下記の事柄を踏まえてからお読み下さい。
ひとつ、この物語は私が実際に体験した非日常を綴った実話であり、そこに居る貴方にとっての然るべき恐怖へと姿を変えて生きていくであろう一種の生命です。それを受け入れ、物語と共生して下さい。間違っても寄生される事の無いようお願いします。
ふたつ、そしてその物語の中でこれから貴方が目撃する『それ』は恐ろしい程に身勝手で不可解な悪意の産物です。どうか、その存在に気付かないまま一生を終えてください。
それでは、語らせていただきましょう。
話は私が19年を重ねた際の一夏まで遡ります。その頃私は賃貸アパートに住み、国際文化学を主に学ぶ大学生でした。高校まで実家暮らしだった私は一人暮らしの大学生活に自然と心踊り、そんな毎日が楽しくて楽しくて仕様が無かったのです。
新しい環境の中で沢山の「初めて」を思い知りました。充実、快楽、喪失、責任・・・
そして最後に、非日常を前にした日常の脆さを悉く脳味噌に叩き込まれました。
ある日の就寝前の出来事です。
我が家の洗面所に佇む小柄な洗濯機、その下の隙間に少量の埃が見えました。
多分その埃が私の運命の分岐点、所謂ターニングポイントだったのでしょう。そこで私は無意識的に運命を選んでしまいました。
そして残酷な事に私は道を誤ってしまった。その、悪意で満ちた「穢れ」に意識を向けた瞬間、私にとっての恐怖の物語が始まりました。
*
ーーー「あぁっ、どうしようか」
私は気の抜けた声で呟いた後に洗面所の壁に吊されている小柄なモップと掃除機を手に取り、慣れた手つきで掃除を行う。
自分で言うのもなんだが私は結構綺麗好きな性格なのだ。物が汚れている事に対して我慢ができない。
そんな私にとって埃は天敵だった。気が付けばそこにいて、分け隔てなく、何度でも世界を汚してくる。その様子は本当に気持ち悪い。
だから埃は見つけ次第徹底的に取り除くのだ。
掃除は想像以上に早く終わる。だからどうという訳でもないが、やはり気分が良いものだ。
「ふぅあぁぁ〜・・・・・・」
何とも間抜けな声を出しながら床にへたり込みただただぼけぇーっとする。時間を無為に過ごすその様もまた間抜けであろう。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
私の周囲には静かな無音が鳴り響いていた。
「・・・寝なければ」
唐突に思い出す、考えてみれば当たり前の事だ。何故忘れていたのだろうか。
時計を見る。11時17分、そこまでではない時間に少しホッとする。
立ち上がり大きく伸びをした後ドタドタと音を立てながら寝室へ続く廊下を駆けて行き、寝室に入ったのと同時に新生活の為新調したオーダーメイド品の羽毛布団にダイブする。
息苦しいが暖かかい。体を毛布にくるめる。体に心地良い疲労感に一日の収束感を感じる。その感覚は睡魔を呼び起こし、私の心身は深い眠りへと落ちて行った。
*
そして次に目が覚めた時、私は驚愕した。
目覚まし時計を掛け忘れていたその事実に気付き驚愕している訳ではない。時計が午後2時半という絶望的な時間帯を指していたから驚愕しているわけでもない。
「埃」だ。
私が居た寝室を除いて家のあちらこちらに埃が積もっていた。
それも膨大な数が。
なぜ?どうして?私は疑問を胸に抱き、少し考えてみる。しかし数考で無駄を悟る。いくら考えてみても今の意味不明な状況に対して恐怖が高まっていくだけだった。
しかし、私は原因の究明を決意した。恐怖はあったが、それ以上にこの状況が苦痛だったからだ。早くこの地獄から解放されたかった。
咳き込みながら家中を見て回る。もしもこれが私への嫌がらせだとするならこれ程適切なものは無い。きっと犯人は頭が良い奴だな。
しかしそれにしても本当に何故だ?一晩で家全体が埃だらけになるなんてどう考えてもおかしい。人為的なものとしか考えられない。
だが、人から恨みを買う様な事はしていない、これだけは自信を持って言える。私は人に優しく出来る人間だ。
小さい頃から謙虚に生きてきた。陰気で頭も良くなく友達も決して多くは居なかったが、何より他を尊重し、人を貶したり見下した事など人生で数える程しかない。その心根がきっといつか報われると私は信じている。
数分後、粗方周り終わり、昨日洗濯機の埃掃除した洗面所に注意を向けた際、私はまたもや驚愕、いや、恐怖した。
何故か?埃の発生源を特定したからである。その、とても悍ましい発生源を。
埃は洗濯機の底からうじゃうじゃと這い上がり、産まれる様に発生していた。これが機械の故障や水道配管の詰まりであったならばどれほど良かっただろう。
しかし、生物の様な挙動を見せる悍ましい埃。
『此処はそんな現実的な場所では無い』と私の脳が、何より、その場の空気がそう告げていた。
やがて、その埃かどうかすら分からない異質の穢れは寄り添い合い、膨れ上がり、歪な一つの集合体へと変貌していく。その形は心なしか人の様に見えた気がした。
そんな異常な状況で、私はただ呆然と立ち尽くしていただけだった。
数秒後、恐怖に気付いた体がようやく動き出し、叫びを上げていた。
「あっあああっああ!!あああっああああ!!!ぅああっ!!」
普段間抜けな人間は恐怖の雄叫びすらも間抜けだ!情け無い叫び声を辺りに散らしながら私は寝室へ逃げ込む。
隣人から苦情が出るほどに強く扉を閉め、すぐに室内鍵を掛けようとした。だが恐怖と混乱のあまり手が震え、いつもなら僅か数秒で完了する動作を何度も何度も失敗しながら行う。焦りがまた焦りを呼び、どんどんと精度が落ちていく。
ダイヤル式の固定錠を動かす度に響くガチャガチャと鳴る音の群れ。その中に一つ、明らかに異なる音がした。
『カチッ』
施錠音がハッキリ聞こえ、手の動きを停止する。そして、世界に静寂が訪れる。
『・・・・・・・・・・・』
無音が激しく鳴り響いた。
「・・・・・・閉まったのか?」
誰が答える訳でも無い虚しい問い掛けに静寂が返事をしてくれていた。
ああ・・・良かった・・・・
安堵し魂でも抜けたかの様にその場でへたり込む。だが、直ぐにその行いを後悔する事になる。
『ぱさっ』
何か乾いた物が地面にぶつかる様なそんなか細い音がぽつりした。その音の発生と同時に心臓の鼓動が跳ね上がる様に大きく、そして激しく加速していく。
そんな小さな音に何を怯えているんだ?自分の体なのに、理解できなかった。でも、直ぐに理解した。
・・・その音は自分の眼前、つまり、扉越し直ぐ側から発せられていた。
ーーー!!!扉の向こうに『あいつ』がいる!!見間違いではなかった!『あいつ』は人の形を取り、ここまで移動して来たのだ!
冷や汗が止まらない。声が出ない。恐怖で足が動かない。だが、逃げなければなけない!!
しかし、無情。私の寝室には外に繋がる窓など一つたりともない。小さい頃から薄暗くて圧迫感ある所が大好きだった。頑固な大家に頼んででも窓を塞ぐリフォームに拘る程に。
・・・そんな下らない拘りは捨てれば良かった!!
たかだか2、3秒の間に幾万と繰り返される後悔の念に心がすり潰されていく。
私に出来る事はただ怯えるだけだった。布団に包まり、耳を塞ぎ、目を閉じて、ただただ怯える。誠に情け無い限りだが、本当にそれぐらいしか無かったのだ。
扉を叩く音が布団越しに聞こえてくる。『それ』が産み出す恐怖の物音を拒絶する為、先程よりももっと強く耳を押しつぶす。
これでもかという程に力む手、触れている部分から氷のような冷たさが感じられた。多分、耳周辺がうっ血しているのだろう。血が全く届いてないから体温も発生していない。
このままだと筋肉が壊死するかもしれない、それぐらいにうっ血とは危険な状態なのだ。
だが手は緩めない、寧ろ力を強めていく。
壊死は想像不能な恐怖程恐ろしくは無かった。私は壊死という想像出来る恐怖へと逃れたかったのかもしれない。その心理の深層は単純にその方が楽だからか、それとも混乱故、自分を追い詰める自傷だったのか、自分でも理解していない。
*
いくばくかの時が流れ、私は気が付いた。
世界の音が全くしなくなっていた。不思議な感覚だ。音が本当に全くしていない。
言葉で表すなら『無音すら無い』そんな所だ。
また、体に異常なまでの違和感を覚える。耳を塞いでいない。さっきまで鬼の様に力んでいた掌の筋肉は、赤子の様にリラックスしていた。
この状況を確認し、私は一つの確信を得る。
そう、気絶していたのだ。思えばさっきから頭が痛い。多分、頭部のうっ血が原因で脳に酸素が行かなかったのだろう。
勝手に納得する私
→→→→→→→→→→♪→♪→→→→
ここまでね、もう力尽きた。疲れちゃのよ〜
こんなきっついポエム文章君も見たないやろ?
続きは気が向いたら書くわ
いつかまた
このトピックは、名前 @IDを設定してる人のみコメントできます → 設定する(かんたんです)
もし読むなら横画面がおすすめ
初めてとはいえ自分の文才の無さに驚いたわ
キツくなったらいつでも読むのやめてええかんね