【食べ物総選挙 小説部門】極上メシ~ひびく火の交響曲~
薄暗い照明が落ち着いた雰囲気を醸し出す焼肉屋「炭火苑」。店内には炭火の香りが漂い、ジュージューと肉が焼ける音が心地よいBGMのように響いている。この店は、どこか懐かしい昭和の雰囲気を残しながらも清潔感があり、地元の常連客に愛されている。そんな焼肉屋に、一人の男が入ってきた。
男の名は藤原拓也。年齢は三十代後半。スーツ姿で、ネクタイを少し緩めている。彼の表情には一日の疲れが滲み出ていたが、どこか期待に満ちた目をしている。「今日は思いっきり食べよう」と決めたのだ。
カウンター席に案内されると、彼はまずビールを注文した。「生ビール、お願いします」。店員が小気味よい動きでビールを注ぎ、泡の比率が美しい一杯を持ってきた。「お待たせしました」と笑顔で差し出されると、拓也は「ありがとうございます」と軽く会釈し、一口飲んだ。冷えたビールが喉を潤し、体中に染み渡る。「これだ」と心の中で呟く。
メニューを手に取り、じっくりと目を通す。「さて、どれにしようか」。焼肉屋のメニューはどれも美味しそうで、迷うのが楽しい瞬間でもある。今日はひとりだから好きなものを好きなだけ食べられる。思い切って10種類を注文することにした。
「すみません、注文いいですか?」と店員を呼び、拓也は頼み始めた。
上タン塩
カルビ
ロース
ハラミ
ホルモン
ミノ
レバー
牛タンの厚切りステーキ風
豚トロ
鶏もも肉の塩焼き
「あと、白ご飯の中盛りもお願いします」と付け加えた。炭水化物は控えめにするつもりだったが、焼肉にはやはり白ご飯が欠かせない。
注文が通ると、店員が炭火を持ってきて網をセットした。炭火の赤い炎が網の下で揺らめき、すぐに焼肉の準備が整う。拓也は追加のビールを頼みながら、次々と運ばれてくる皿を眺めた。それぞれの肉が輝いて見える。「これは贅沢だな」と思わず笑みがこぼれる。
まずは上タン塩。レモンを絞り、薄く切られたタンを網の上に乗せる。ジュッと音を立てて焼ける様子を眺めながら、ちょうど良い焼き加減を見極める。「これくらいかな」と思ったところで、箸で取り上げて口に運んだ。タンの歯ごたえと塩の絶妙な加減がたまらない。「これはビールが進む」。
次にカルビ。脂の乗ったカルビは見るからに美味しそうだ。焼きすぎないように注意しながら、タレに絡めてご飯と一緒に食べる。「これこれ!」と心の中でガッツポーズをする。
ロースは脂身が少なく、赤身の旨味がしっかりしている。シンプルに塩だけで焼き、肉本来の味を楽しむ。「この食べ方もいいな」。
ハラミの柔らかさとジューシーさは絶品だった。タレに漬け込まれており、噛むたびに旨味が溢れる。白ご飯を一口頬張り、口の中でハラミと融合させる。満足感が高まっていく。
ホルモンとミノは独特の歯ごたえが楽しい。特にミノのカリッとした食感はクセになる。「これもビールと相性抜群だな」と感じながら、ゆっくりと味わった。
レバーは新鮮そのもの。独特のコクと風味が広がり、ちょっと苦手だった頃を思い出して懐かしくなる。「大人になったな」とひとりごちた。
そして、牛タンの厚切りステーキ風。これは焼肉屋ならではの贅沢な一品だ。厚みのあるタンをじっくりと焼き、ナイフで切るように口の中へ運ぶ。「肉を食べている」という実感が全身に広がる。
豚トロと鶏もも肉の塩焼きも、それぞれの良さがある。豚トロは脂の甘みが特徴で、塩でシンプルに味付けすることで素材の美味しさが引き立つ。鶏もも肉はジューシーで、ほんのり焦げた香ばしさが食欲をそそる。
気づけば、白ご飯も完食していた。追加で頼もうか一瞬迷ったが、「これ以上はさすがにやりすぎかな」と思いとどまった。
最後に締めの冷麺を頼むことにした。キンキンに冷えたスープと、ほどよい弾力の麺が、焼肉で温まった体をクールダウンさせる。これで完璧だ。
拓也は深い満足感に包まれながら、会計を済ませた。財布は少し軽くなったが、それ以上に心が満たされた。店を出ると、冷たい夜風が頬を撫でた。「また来よう」と心に決め、彼は家路へと歩き出した。
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ジュージューと肉が焼ける音が心地よいBGMのように響いている。
って表現語彙力ありすぎてびっくりしました!!!
読みやすくて凄い好きです