題名は未定
「彼氏が欲しいんだ」
課題と睨めっこしながらもせっせと取り組む、目の前の何か言ってるこいつは、学年全員を友達だよと呼び、彼氏はいないが学校中の男たちを全員惚れさせてほとんどを片思いにさせているクソリア充女。そして、良くも悪くもかなりの鈍感な奴。
なんで急にさ、と聞けば、「いやあ?明日バレンタインじゃんか」と。そういえばそうだった。
「非リアには無関係な日でも、殺意漂う教室で怯える日になるのかね。」ま、とりあえず、穏やかに過ごせるなら、それでいいけど。
なーんてね、そう思っている間に、友達は椅子から勢いよく立ち上がる。
課題を終わらせて気分が良いのだろう。んーと言いながら気持ち様さそうな背伸びをしている。
椅子にまた座ったかと思うと、今度はトントントトン、と馴染みのあるラブソングのリズムを机でたたいている。
「やっぱさ、バレンタインって恋の祭典じゃん?ね、だからさ?彼氏欲しいよねーって。」
こんな話、私以外の誰かにしてみろ。多分、まばたきする間に恋に飢えた男どもが学校中から形相を変えて迫ってくるに違いないさ。多分ね。
「あんたも彼氏居ないでしょ?じゃあさ、一緒に明日彼氏作ろうよ!!それがいいや!私もさ、その、実はね、気になる人が居てね…」
彼氏がいないことについて煽られるとは思わなかったが、気になる人がいる。すごく気になる。心臓の鼓動が急かしてくる。耳元に友達が近づいてくる…
その瞬間、教室の扉がガッシャーンと…待て待て待て、勢い勢い!!扉外れた!!倒れたって!!
「きっ、気になる人がいるのっ…!?」
威勢よく扉を壊したのはうちらの男担任だ。
放課後まで教室に残ってTikTokでも撮ってると思ったのだろうか。それとも、扉開けようとした瞬間に「気になる人が…」なんて聞こえたからだろうか。どちらにせよ、そりゃあんな勢いよく扉に突撃してくるか。馬鹿だなあ…。
こいつの気になる人なんて、もうとっくに知ってるのにな…
「あっこら先生に気になる人をまずは…!!」先生が迫ってくる。
「あっ、先生!課題終わったんで帰りますねー!遅くなってごめんなさーい!すぐ帰りますからねっ、ほら帰ろっ!ね!」
早口で友達はそう言うと、先生の手をすっとよけながら、私の手を強く引っ張る。
「いででで……ん?」
その顔は、ほんのりと赤かった。
その耳は、火照るように赤くなっていた。
その手の平は、とても暑かった。
その全てをーーー…
いつの間にか、夕日が沈んできている。6時の帰りのチャイムが鳴りだす。木々の間から夕陽が時たま顔を出すのが、凄く眩しい。
私の手を引っ張って、すこし速足で帰り始めた友達…いや、彼女の目は、いつもと違い、活気に満ち溢れているようだった。
まるで、何かが吹っ切れたように。
明日、誰かに告白するみたいな。
ほんとは、彼氏なんか要らないよ、だとか。
私は、彼女が大好きだ。だから、私は彼氏なんてつくらない。私だって、こいつを絶対堕としてやる。とか、思ってた。
この気持ちが、彼女も同じだって、ずっと一緒にいるうちに。それっぽい言動をしてるとか思ってたり。
そのすべてに、今日、確信と結論が出たから。
なんだか少しほっとしちゃったな。
「明日、楽しみだねっ!!」
彼氏がほしいらしい彼女に、こくん、と深く頷く。
その背中には、手を繋ぐ仲良しな2人の、混じり合う2つの影が落ちている。
[おわり] C((・ω・ ))
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