標準偏差の性質

1 2025/02/25 05:36更新

今回は、国語、社会、数学、理科、英語それぞれのテストの標準偏差の合計と五教科合計の標準偏差の関係について考えていきます。

※テストの標準偏差とは、簡単に言えば受験者間の点差のことです。満点と0点しかいなければ標準偏差は大きくなりますし、平均点付近しかいなければ標準偏差は小さくなります。

具体的には分散の正の平方根です。分散は

(「『各人の点数と平均点の差』の2乗」の合計)÷(人数)

で求められます。また、分散は標準偏差の2乗であると言い換えることもできます。

※今回は(2教科の)共分散というものも出てきます。共分散は、2つのデータの相関を求めるのに使われることの多い指標です。

2教科の共分散は

(「各人の(一方のテストの点数-平均点)×(他方のテストの点数-平均点)の合計」÷(人数))

で求められます。

定義・定理

国語,社会,数学,理科,英語それぞれの平均点を[a],[b],[c],[d],[e]、分散をS²(a),S²(b),S²(c),S²(d),S²(e)、標準偏差をS(a),S(b),S(c),S(d),S(e)と定義し、2教科の共分散をS(ab),S(ac)などと定義することとします。

また、

(テストの分散)=(全受験者の点数の2乗の平均)-(全受験者の平均点の2乗)

となることが知られています。例えば国語の場合

S²(a)=[a²]-[a]²

という等式が成り立つことになります。

さらに、「それぞれの教科の標準偏差の積×(-1)」≦「二教科合計の共分散」≦「それぞれの教科の標準偏差の積」となることが知られています。

今回はこれらの定義や性質を用いて話を進めていく方針です。

二教科の場合

五教科それぞれの標準偏差の和と五教科合計の標準偏差の関係について考えたいところですが、まずは二教科(国語,社会)それぞれの標準偏差の和と二教科合計の標準偏差の関係について考えてみます。

(二教科合計の標準偏差)²

=(二教科合計の分散)

=S²(a+b)

=[(a+b)²]-[a+b]²

=[a²+2ab+b²]-[a+b]²

=[a²]+2[ab]+[b²]-[a+b]²

=([a²]-[a]²)+[a]²+([b²]-[b]²)+[b]²+2[ab]-[a+b]²

=S²(a)+S²(b)+([a]²+[b]²)+2[ab]-[a+b]²

=S²(a)+S²(b)+{([a]+[b])²-2[a][b]}+2[ab]-[a+b]²

=S²(a)+S²(b)+[a+b]²-2[a][b]+2[ab]-[a+b]²

=S²(a)+S²(b)+2([ab]-[a][b])

=S²(a)+S²(b)+2S(ab)←S(ab)は国語と社会の共分散

ここで

「国語の標準偏差と社会の標準偏差の積×(-1)」≦「国語と社会の共分散」≦「国語の標準偏差と社会の標準偏差の積」

となるので

-S(a)S(b)≦S(ab)≦S(a)S(b)

∴S²(a)+S²(b)-2S(a)S(b)≦S²(a)+S²(b)+2S(ab)≦S²(a)+S²(b)+2S(a)S(b)

∴(S(a)-S(b))²≦S²(a+b)≦(S(a)+S(b))²

∴|S(a)-S(b)|≦S(a+b)≦S(a)+S(b)

これより、(国語の標準偏差と社会の標準偏差の差)≦(二教科合計点の標準偏差)≦(国語の標準偏差と社会の標準偏差の和)となることがわかりました。

五教科の場合

二教科間の標準偏差の差)≦(二教科合計の標準偏差)≦(二教科それぞれの標準偏差の和)というのは二教科が国語と社会でなくても常に成り立つので

|S(a)-S(b)|≦S(a+b)≦S(a)+S(b)

|S(a+b)-S(c)|≦S(a+b+c)≦S(a+b)+S(c)

|S(a+b+c)-S(d)|≦S(a+b+c+d)≦S(a+b+c)+S(d)

|S(a+b+c+d)-S(e)|≦S(a+b+c+d+e)≦S(a+b+c+d)+S(e)

がいずれも成り立つことがわかります。

これら4つの式から

S(a+b+c+d+e)

(≦S(a+b+c+d)+S(e)

≦S(a+b+c)+S(d)+S(e)

≦S(a+b)+S(c)+S(d)+S(e)

)≦S(a)+S(b)+S(c)+S(d)+S(e)

となることが分かります。

五教科合計の標準偏差が国語、社会、数学、理科、英語それぞれのテストの標準偏差の合計より大きくなることはないということが証明されました。

補足

(S(a)-S(b))²≦S²(a+b)≦(S(a)+S(b))² とありますが、

a,bが互いに独立であるときのS²(a+b)は(S(a)-S(b))²と(S(a)+S(b))²の(平均)と一致します。

S²(a)+S²(b)-2S(a)S(b)とS²(a)+S²(b)+2S(a)S(b)の平均は実際にS²(a)+S²(b)になりますね。

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