扉の向こう

1 2025/06/07 00:34

どこへいっても紅色で、食事もほんのり紅色で、そんな紅に支配されたかの如く、燃え盛る地上の部屋とは違い、私の地下のお部屋は静かで淡い紅色だ。私が引き篭ったのはもう約500年以上も前で、ただ住みやすかったから、という理由でここに引き篭り続けた。そんな単純で、簡単に気が変わりそうな理由だが、この妖怪社会では「住みやすい」とは大変重要なことで、なぜかと言うと、大抵は森や、強者の影や影で生きにくく住む場合が多いからだ。だからこそ、引き込まれるような住みやすい環境というのは大変恵まれているのだと自覚している。

私がいつものように毛先と羽をいじりながら読書をして─500年で全て覚えてしまったけれど─複数の物語の解釈を広げていって、他の本との解釈の交差を楽しんでいると。ふと思った。もし私が完全なる予知能力者私が扉の先を予知して言い当てられるならば、それは正解であるのかという問題だ。これだけ聞くと大変私が、矛盾しているように考えられるが、どういうことかというと、未来について、その未来が予測して正解できたならば、それは過去の地点から見た未来で、今は現在である。そこで予知した内容と違う行動をした場合は辻褄が合わない。なので私は完全なる予知能力者ではない。だがこういうパターンも考えられる。私が完全なる予知能力者であるならば、過去の自分は未来の自分の行動を予知して予知が変わる。このパターンだと、無限回の予知が行われることになり、行動のパターンは有限であるからして、私は完全なる予知能力者であることになる。このようにさまざまな憶測を自身で列挙してきたが、解決策が存在する。それは未来が分岐するという考え方だ。例えば過去の自分Aが未来を予知し、未来の自分BはAの予知が外れる行動をしなければならないこととする。そして未来が分岐すると仮定し、ことを進めると、Aが予知しそれが当たっていた世界線とAの余地が外れた世界線の大きく二つに分けられる─その他もあるだろう─前者の場合は、Aの予知があたり、完全なる予知能力者だということになる。そして後者はAの予知が外れ、完全なる予知能力者ではなくなる。こうしてAとBどちらともの条件が満たされるわけである。

さて、視点を少しX軸かY軸かZ軸か、そんなことは関係なく、ずらして考えてみよう。この問題ではあの「完全なる予知能力者である(でない)私」と扉、そして扉の向こうが登場するが敢えて答え合わせをしないとどうなるのだろうか、ただの厨二病かも予知能力者かもわからない私がただただ悩むだけだろうか。きっと、そこでは厨二病だった私はただただ楽しむだけで、完全なる予知能力者だったものも厨二病と側から見れば同義だろう。このように、「何か正解がある事柄」に対しての「答え合わせ」と言うのはそのものの本質に関わるほどの大きな問題なのだ。また、「答え合わせ」にも様々な段階と言うべきものが存在しており、最初の段階はその答えが合っているかどうかを確認することだと考えている─これは答えと呼ぶべきものは用意してから答えと呼ぶべきものであると言う私の考えに依存する─合っていれば答えだし、間違っていれば、解答側に大変申し訳ない。ただこの工程にもいくつか矛盾があり、答えを確認するには答えが必要であり、その答えが合っているか確認するために答えが必要で....という永久的につづく螺旋が発生する。なのでその工程を終わったとして次の段階へ向かう、そう「解答者との答えの照らし合わせ」である。この工程にはおそらく矛盾はないが、いささか難しいところがある。それは解答者と答えを照らし合わせる者が別人の場合、その答えに対する解釈がほとんど確実で違うと言うことだ。おそらくはそれ以外には問題がない。そして、ようやっと「解答者が答えを知る」ことができる。

さてここまで長く書いてしまったが、これは長々とした前振りであり、実際なくても構わないものなのだが─少なくとも私はいらない─率直ゆ言うと扉を開けてみようと思う。と言うことで私は読書のためにまるまり、寝転んで体を起こし、床にあるスリッパを、履いて扉に向かった。そして予測しながら開けた。

そこから何が何で何で何なのか等々は想像しても自由である。なぜならば描かれてないからである。

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その他2025/06/07 00:34:23 [通報] [非表示] フォローする
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修学旅行で私のあだ名に哲学ニキが追加されました。


3: モブ王 @plotzuki15 2025/06/15 08:20:10 通報 非表示

>>1
すごい


2: Lil Emull @r79 2025/06/14 23:55:32 通報 非表示

あなたが前半で言っているのは、全能の石問題に近い。貴方が完全な予知能力、「全知の側面」を持っていて、それを扱える場合、あなたは自分の未来の行動を予想できるか、ということ。もしあなたが完全な予知能力者であるならば、あなたは未来の自分の行動を当てることが出来る。しかしながら、未来の自分は自分の予想とは違う行動が出来るため、矛盾が生まれる。あなたはそこでパラレルワールド理論である、「世界が分岐する」という考えに辿り着いた。

素晴らしい考えだと思う。なるほど、確かにこれなら矛盾は生まれない。しかしながら、それでは片方の世界の、Aが完全予知能力者ではなかった場合の世界。完全予知能力者でないならば、そもそも世界が分岐するどころか、元々別の世界線である。なぜなら、Aの状態が違うからだ。つまり、後者の世界では元々Aは予知能力者などではなく、ただの嘘つきになる。真の完全予知能力というのは、「予知が正解している世界」に絶対的に近づく力を持っており、貴方の言った通り、予知がかわるのだろう。


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