世界一の『映えない』

18 2025/12/06 13:18

時刻は午後八時。

クリスマスイブが、都市の騒動を凍てつかせ始めた頃である。

汐音は、浅い呼吸と共に最後の仕上げを終えた。六畳一間の安普請——汐音がSNS上で『しおね』を名乗り偽るその部屋は今、冷たい光沢を放つショーケースと化していた。

汐音はスマホのレンズが捉える視線を見上げてみる。その中央に据えられたのは、クリスタル製キャンドルスタンド。部屋の壁にはLEDが滝のようにカチカチと光を撒き散らしていた。

「よし、完璧」

テーブルには、スーパーの半額棚から救出されたローストチキン。光沢を出すオイルを過剰に塗布したベビーリーフの山。そしてこの演出の要となるエルメス風マグカップが、巧みな構図で配置される。

汐音の指が、決意と共に画面をタップする。

『タイトル:#贅沢なクリぼっち#明日はクリスマス』

コメント欄には、雪崩のように賛辞と羨望の言葉を吐き出す場所となっていた。

『センスよくない?』『しおねちゃん神〜』『羨ましい!』『真似してみたい』『クリぼっちでも私たちがいるよ!』

汐音は、作り慣れた笑顔をカメラに捧げる。

それはここ数年、汐音が世界に売りつけてきた“幸福なクリスマスイブ”という名の、最も高価な商品だった。

しかし華やかな光の裏側で、現実は薄氷のように冷たい。今、この部屋にいるのはインフルエンサーなどではなく、ただの破綻した虚像の担い手にしかすぎない。

「そしてプレゼント開封の儀式、と」

汐音は冷めた瞳の奥で笑い、プレゼントの箱をテーブルに置く。自分の彼氏からのプレゼントを偽り、華やかな女子を演じる。

これが汐音の人生の全てだ。

その時、部屋の扉が軋むほどの勢いで開け放たれた。汐音は驚いて振り返る。

そこに立っていたのは、このシェアハウスの同居人である波瑠だった。

「そこのネオン中毒。深夜の光害よ」

「ネオン中毒だなんて言わないで!私は仕事中なの。フォロワーたちが待ってるんだから!」

波瑠は汐音の華やかな装飾を一瞥し、まるで純粋な水に油が垂らされたかのような、心底からの嫌悪で顔を歪める。

そして汐音が並べたテーブルセットを見下ろし、汐音を軽く睨んだ。

「随分と豪華ね、インフルエンサーさん。これ、全部一人で食べるの?」

「もちろん!食品ロスはいけないからね」

「それに承認欲求を満たすだけに買ったの?食材が可哀想ね」

汐音は怒りと屈辱で唾を飲み込む。

それを見て鼻を鳴らした波瑠は無言で、プレゼントの箱についたメッセージカードを読んだ。

汐音が今朝、甘ったるいポエムを手書きで書き写したものだ。

「“愛するあなたへ。もうすぐでクリスマスだね、遠くて会えないけれど私の心はあなたで満たされています。いいクリスマスを過ごしてね……”」

波瑠は読み終えた後、そのカードを無慈悲に引き裂いた。汐音は目を見開く。

「嘘くさいポエムね、もう少し上手くやりなさいよ。あなたの独り言でしょ、所詮。そんなにインスタ映えしたいわけ?本当に分からない」

その時、波瑠は汐音のスマホを奪って写真を撮った。豪華な『しおね』ではない。ただの汐音だ。波瑠はその写真を、そのまま汐音のアカウントで投稿する。

一連の行動を見ていた汐音は血の気が引くのを感じたが、コメント欄は汐音の予想と全く違う反応を見せ始めたのだ。

『待ってこれリアルすぎない?ww最高なんだけどーw』『嘘を暴くサンタ、爆誕』『タイムセールサンタ、マジで救世主』『これはこれでクリスマスっぽくていい』

「私はあなたの人生に口出しはしない。けど、聞いて。私はありのままのあなたがいいと思うの。これ、食べれないでしょ?私も一緒に食べてあげるから」

「……」

そしてその夜、二人で『映えない』クリスマスイブを過ごしたのである。

虚構が崩壊した瞬間、皮肉にも汐音の現実は過去最高の“熱狂”を生み出していた。

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学び2025/12/06 13:18:26 [通報] [非表示] フォローする
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あ写真部門かと思った


2: 小説評論勢 @SyHy2025/12/07 17:02:18通報 非表示

文才そのものは感じるじ、語彙力はいいんだが、ストーリーとして何一つ面白いと思える場面がない。


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