リアルなドール 後編
俺は最後の客を見送りステージの片付けをしているとおじいさんが歩いてきた。
「すいません、ここらで孫を失くして...見かけませんでしたか?」
写真を渡され、見ると今日売れたフラワードールに使った少女だった。ただそのまま言うと口論になりかねない。それどころか警察を呼ばれるかもしれない。
「あ〜...すいませんね、見かけませんでした。見かけたら電話するので連絡先を教えていただけますか?」
おじいさんはしょんぼりとしながら帰っていった。この連絡先はいくらになるかな...いやおじいさんの連絡先なんて誰も欲しがらないか。グシャッと丸めてポケットに入れた。
「ただ〜ま〜」
店に着くと昨日の変な女が立っていた。
「あら、おかえりなさい。少しいいかしら?」
「...とりあえずお入りください。」
女を奥へ案内しお茶を出す。
「で、何の用でしょうか。まだ開店時間まで早いのですが」
「...妹が居なくなっちゃって。それでね居なくなった日この店に立ち寄っていたから...」
急いで頭を回す。が最近フラワードールを作りすぎて誰の事を言っているのか分からない。女は写真を見せてきた。見るとおじいさんが見せてきた写真と同じものだ。
「あぁ...先程おじいさんにも言われたので言いますが見ていませんし一々客の顔を覚えていません。お引き取りください。」
少しキレながら言うと女は泣きそうな顔をした。
「嘘をつくのですか?」
「?」
何を言っているかよくわからない。嘘をついたがなぜ見破られたのか。
「あなたはまたそうやって逃げるんですね」
女の喉から変な音が聞こえた。まるで狼の唸り声のようだ。
「グルルルルル...」
「は?ちょ...まっ」
女は目から涙を流している。
狼で思い出した。昔俺は山の近くに住んでいて野良猫や野良犬が多かった。その時まだ幼かった俺は犬と間違えて狼に触れた。それが逆鱗に触れたのか小さな狼が襲ってきた。俺は狼を踏みつけ殺してしまった。動かなくなったのを見て怖くなった俺は急いで帰った。
もしあの触れた狼がこの女で殺してしまった狼が作ったフラワードールだったら...
「私の妹、返してよ!」
女に噛み殺される。首を噛まれて意識が遠くなる。女はいつも俺がしていたようにフラワードールを作った。とても綺麗なパンジーとビオラで。
「謝ってくれれば許したのに...これで分かったかしら。フラワードールにされる気持ちが。」

