poiuy ―冷蔵庫は今日も反抗期―
『poiuy ―冷蔵庫は今日も反抗期―』
阿久津四郎時貞が目を覚ますと、枕が「おはよう諸君」と演説していた。
今日は月曜日なのか象曜日なのか分からないが、とりあえず歯ブラシが反乱を起こしていたので見なかったことにした。
ミスタードーナツでのバイト初日。
ドアを開けたらドアが逃げた。代わりに壁が「いらっしゃいませ」と横移動してきた。店長はドーナツそのもので、穴の部分から名刺を発射した。
「阿久津くん、君にはレジと宇宙の番を任せる」
「宇宙の番?」
「今日は湿気が多いから銀河がこぼれやすい」
理解しようとしたら負けなので時貞はうなずいた。
第一章かもしれない部分
そこへデスイーター川口(第2形態)がスケートボードで天井を走ってきた。
彼は人間と洗濯機のハーフで、悲しいと脱水を始める。
「聞け阿久津! 俺の第1形態は消しゴムだった!」
「重い告白をレジ横でするな」
川口は急に真顔になり、レジ袋の中から古代文明を取り出した。賞味期限は来週だった。
「世界が折りたたまれる前に《poiuy》を探せ。あれは剣であり魚肉ソーセージであり曜日だ」
「情報の角度が多すぎる」
たぶん第二章
そのころ鬼頭典膳は公園でブランコと将棋を指していた。
駒が全部「歩」なのに互角らしい。
「少年、来ると思っておった。ワシの占いでは今日のラッキーアイテムは踏切と他人のくしゃみじゃ」
そこへビッチ・ウルフマン師匠がスライディング土下座で登場。
背中に“取扱注意”のシールを100枚貼っている。
「修行だ時貞! まず自分の影に電話をかけろ! 出なかったら留守電に味噌汁の感想を入れろ!」
「なんでですか」
「理由を聞くやつは三流、聞かないやつは冷蔵庫」
時貞は冷蔵庫になりたくなかったので従った。
ここから溶ける
突然、空から巨大な半角カタカナが降ってきた。
「ポ」「イ」「ウ」「y」「肩こり」
街は悲鳴と焼きそばの匂いでいっぱいになる。
川口が第2形態から第2.718形態に進化し、円周率を吐きながら叫んだ。
「敵だ! 意味を意味しない意味そのものだ!」
ミスタードーナツ店長が揚げたての太陽を投げ、師匠は電子タバコで除霊し、典膳はブランコを時速300キロでこいだ。
時貞はついに《poiuy》を抜いた。
それは剣というより、眠そうなネギだった。
《己の魂を磨き上げ、さあ魔剣をその手にとり戦え!》
とネギが言った。ネギが。
「もう誰を信じればいいんだ!」
クライマックスらしきもの
時貞は叫びながらネギで空を切った。
すると切り口から月が三枚おろしになり、信号機がラップを始め、犬が市役所に立候補した。
デスイーター川口は感動で脱水モードに入り、師匠は「それでいい!」と逆立ちで拍手。
典膳はなぜか増えた。二人いる。どっちも本物らしい。
敵は質問してきた。
「お前にとって物語とは何だ」
時貞は考え、考えるのをやめて答えた。
「ドーナツの穴に引っ越してきた雷おこしみたいなもの!」
敵は「なるほど」と納得して帰った。
そして終章のふり
翌日。
ミスタードーナツのタイムカードが家出し、代わりに時貞の影が出勤した。時給は影に支払われるらしい。
川口は第2形態のまま回覧板に封印され、
師匠は空き地で「常識」の墓を建立、
典膳はブランコに負けて入院した。
時貞は《poiuy》――ネギ兼魔剣兼曜日――をレジ横に立てかけ、つぶやく。
「世界、もうちょっと意味不明でいてくれ」
すると天井がうなずき、ドーナツが一斉に拍手した。
冷蔵庫はまだ反抗期だった。
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ドーナツ屋で働く阿久津が、ネギみたいな魔剣を持って、意味そのものと戦うけど、結局“世界はカオスでOK”という話。

