現世
冷たい海で溺れてしまって、怖くて、でも凪兄が来てくれた。
「なっちゃん何歳?」
「7歳!」
「よし!」
大好きな兄の顔、頭の上の手。
「よしよし」
七五三とは、七つまでは神の御心次第と言われ、大きく育ったことに感謝するものだ。
「大きくなったな」
今日はナツの七五三。
神社で祖父が祈祷をする。
境内に二人で上がり、正座して座る。
「ありがとうございます」
「手」
「ん」
手を洗うのはお清め、邪気を祓う。
「祓い給え清め給え、祓い給え清め給え」
ずっと正座でいるのはキツイので、足を崩す。
「よし、もういいぞ」
「ナツ、海、行こうぜ!」
「うん!」
兄の後をついて走っていく。
「現世へ留まっておられたこと、感謝申し上げます」
七五三を終えるまではナツを海に入れない、なので今日から解禁だ。
あの時、凪がナツを助けようと海に入った日。
「これ、行ってはいかん!」
引き留めるのを振り切ってあの子は妹を助けに入った。
「あれではとても人を庇って浜へ戻るなど、まして子供じゃから、余計に無理な話じゃ」
海が荒れれば人に御することなど出来はしない。
「連れていくな‥か」
船を出すのも躊躇するような時に、あの子は、凪は‥
「当然、とも言えるかの、生まれてきた妹が連れていかれるのを黙って見ておるなどできはせんか、強い子じゃ」
事故ではない、あれは‥
「お兄ちゃん、かわいい?」
「おう!」
少し向こうで孫たちが遊んでいる。
「あの子が生まれた時からわしらは、考えてはおった」
あの日の夜、孫が寝た後言ったのだ。
「今日ことを忘れてはならん」
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