夏の朝
※ホラー系が苦手な人は昼間や誰かが近くにいるときに見て下さい。でもそれほど怖くないと思います。
これから話す話しは僕が中学―年生の時に体験した凄い不思議な話しです。
当時、僕の加入していた部は夏の間伊豆半島で合宿をすることが伝統になっていて、その年の夏も練成合宿をしに行っていました。
毎年泊まる旅館は決まっていて、その年も顧問の先生の親戚が営む旅館に泊まりました。
その旅館は裏に見晴台のようなものがあり、そこまでいくのに100段階段があって宿泊中毎朝早朝にそこをダッシュで登るというハードな練習があったので僕と友達(ここではA君とします。)は下見というていで日が登るぐらいの時間に旅館をでて、その階段を登りました。
はじめの方は二人とも割と速いペースで登っていたのですが除中から何段登ったのか分からなくなるほど疲れてしまい、僕たちは除中の階段で少し休んでいました。辺りを見回すと泊まっていた旅館が凄い下に見えることに気がついて僕たちは頑張ってもう少し登ろうという気持ちになりました。それほど綺麗だったんです。
しかしいくら登っても上につかず、どんどん霧が濃くなっていきました。
まさかと思いながらも僕はA君に言いました。
「狐につままれたんじゃないか?」
でもそうゆうのはまったく信じないA君でしたから「ありえない、ありえない。」としか言いませんでした。今思うと彼も薄々気づいていたのでしよう。
そんなやりとりを続けているとどちらかともなく引き帰そうという雰囲気になってきました。
「あのさ…ひき返そうよ。」「うん、そうだね。」
しかし、降りようとしたとき向こうから降いてくる人影が見えました。
「ちょっちょっと見て!」
人影はだんだんはっきりと見えるようになり女性であることがわかりました。
その時、逃げるべきだったのか今でもわかりませんが逃げることはほとんど不可能でした。
僕たちの足はほとんど地面にくっついたかのように硬直していたのですから。
女性はじっと動かないで自分を見つめる僕たちに気づくと「どこからきたの?」と声をかけてきました。
近くにきてわかったのですが本当に美しい女性で、声もまるでハープのように美しく僕たちはより言葉を失ってしまいました。
しかし、A君はハキハキとした声で「東京から来ました!部活の合宿で下の旅館に宿泊してます!」と元気に答えました。
「東京から来たのね、遠かったでしょ。名前はなんて言うの?」
「A男って言います!」
その美しい女性はハキハキと答える子が好きだというような顔でA君を見つめてから次に僕に聞いてきました。
「あなたは?」
「えっと……」
僕は答えたくありませんでした。
「僕、知らない人に名前は教えるなって言われてるので…すっすみません、、」
女性は曖昧に微笑むとそのまま坂を降って行きました。
そのあと僕たちはどうやって下まで降りたのかよく覚えていません。
でも、降りてから直ぐに顧問の先生にさっき早朝にココを出てあそこの階段を登って上に行こうとしたら綺麗な女の人に声をかけられたと話したことは覚えています。
すると後ろで心配そうな顔で僕たちのはなしを聞いていた旅館の女将さんが急に形相を変えて僕たちに「聞かれたことに対してまともな返事をしたか?」と聞いてきたので僕は「答えたくない」と答えたと伝えると女将さんは少し心配そうな顔で明日までに何かあったら教えてと僕に言ってきました。A君は女将さんの形相から「はい」と言えなかったのでしょう、「僕も答えなくないと言いました」と言いました。
その日の練習中A君は熱中症になり近くの病院に運ばれるも息を引き取りました。
顧問の先生は練習を途中終了して旅館に戻ってくると女将さんに「A君が亡くなった」と伝えました。
すると女将さんは「今日、あの階段を登った男の子たちは?」と顧問の先生に聞きました。
そのあと僕は女将さんから色々と話を聞かされたのですが、A君はやはり名前を言ったことで亡くなってしまったようでした。
昔から早朝にあそこの階段を登ると狐につつまれた様な状況に陥り、その後美しい女の人が現れるそうでした。
「さっき、正直に言ってくれれば死なないで済んだのに…」
女将さんが最後にそう言った言葉は未だに僕の頭の中に残っています。
社会人になって家庭を持った今でも『嘘をつかない』ということは大切にしています。
友人A君の死を無駄にしないためにも。