終末世界的な
「はあ…」
双葉が大きなため息を吐いてこちらをちらっと見た。
「はあ…」
ちらっ
「はーああ」
ちらっ
「どうかしたの」
私は本を閉じて双葉の方を向いた。
「やーっとこっち向いたね?…あっ本読み出さないでよ!」
双葉が私の手から本を取り上げた。
「ねえ、ちゃんと栞して…」
「『罪と罰』暗そー」
「ドストエフスキーだよ」
「えっドラえ…」
「ドしか合ってないし。もういい」
双葉の手から本を取り返して本を開いた。双葉がまた大きなため息を吐く。
「文字を視線でなぞってるよりもっと話そうよ。これだけ話さないと人の言葉話せなくなりそう」
「私がいる」
「正確には、彩だけ」
双葉がおもむろに外に視線を向ける。
倒壊した建物、鉄骨が剥き出しになったビル、動かない重機、銃痕。
「もう何もない」
「…それが、ため息の理由?」
双葉は答えずに立ち上がった。黒髪と制服のスカートが揺れる。
「行こう」
「うん」
私も本を閉じて立ち上がった。
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