#1 もう一度あの声で。
東京、新宿。夜の街だ。
空は排気ガスに塗れ、地上は人々のため息、歓声、泣き声。
なんともやり切れないような、そんな淀んだ心持ちだった。
古本屋で本を買う『夏が近づく、君が遠のく』という話だ。
題名が馬鹿らしい。すると店主が困ったような顔で、
「これもらってくれませんか、もちろん無料です。」
古びた箱で、何やら絵が描いているようだがよくわからない。
無料でもらえるならもらってみよう。そう思った。
「はい、もちろん」
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家に帰るとその箱を慎重に開けていく。
すると、突然光が溢れ出し、何やら人のようなものが飛び出した。
「マスター!よろしくお願いします!初音ミクです」
「初…音ミク…?」
初音ミクといえばあのVOCALOIDじゃないか。俺も一時期聞いていた。
「おっ…と…私怪我してますね。」
そりゃそうだ。あんなボロい箱に入れられていたのだから。
「なあ、」
「はい!なんでしょうマスター。」
「俺は何を…君にできる?」
すると彼女は晴れた笑顔で、
「決まってるじゃないですか、
私に歌を歌わせてください____!」
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