フェルマーの最終定理教えたる。


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その他2021/10/08 21:02:54 [通報] [非表示] フォローする
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やるぞおおお


Fermat の最終定理の証明に使はれた現代数学の idea や道具 について、なるべく予備知識なしに読める様に解説する。

Fermat の最終定理とは次の定理である: 定理. n を 3 以上の整数とする。このとき、

xn+yn =zn を満たす正の整数 x, y, z は存在しない。

これに関する歴史や数論に於ける意義などについては [3] が極めて読み 易く書かれてゐるので是非参照されたい。本稿ではこの定理そのものよ りも、その証明に使はれた現代数学の様々な idea や道具についての解説 に重点を置く。なほ、Fermat の最終定理の証明についてのより詳しい解 説として [1], [2] がある。

Fermat 予想1 は K. Ribet により「谷山志村予想」に帰着された (1990 年)。A. Wiles (1953–) が 1994 年に証明したのはこの谷山志村予想の一 部2 であつた。谷山志村予想とは、「楕円曲線」と「保型形式」とがうま く対応する、といふ予想である (この予想は 1955 年の東京日光国際代数 的数論シンポジウムで谷山豊 (1927–1958) によりその原型となる予想が 問題として提出され、後に志村五郎 (1930–) により現在の形に精密化さ れた)。楕円曲線と保型形式とは、以下に説明する様に、素性の全く異な るものである。前者は代数的乃至幾何的対象であり、後者は解析的3 対 象である。この様に、全く異なる二つの対象や分野の間に橋を架けるこ とは (数学以外でもさうだと思ふが) 数学に於いても実り多い結果を齎す ことが多い。その様な「橋」の中で、数論の分野で一番有名なのは恐らく

「岩澤主予想」であらう。この予想は岩澤健吉 (1917–1998) により 1960

1証明されるまでは「Fermat 予想」とも呼ばれてゐたので、文脈によつてこちらも 使はせていただく。

2一部ではあつても Fermat の最終定理を導くには十分な部分。

3 「代数的」「幾何的」「解析的」といふのは、高校数学の項目から例を引けば、「文 字式」「平面 (空間) 図形」「微分積分」などをそれぞれ想像していただければ当たらず とも遠からずである。


楕円曲線とは所謂「楕円」のことでは ない。楕円の弧の長さを計算 するときに現れる或る函数と関係が深いところから楕円曲線と呼ばれる。 それは色々な側面を持ち、色々な定義が可能だが、最も手取り早いのは、

「方程式

y2 = F(x), F(x) は x の 3 次式で重根を持たないもの、

により定義される xy 平面内の曲線」といふものであらう。高校までの数 学で一次及び二次の方程式により定義される曲線は比較的詳しく扱はれ るし、扱はれない部分ももう少し突込んで学べば十分よく理解出来るが、 楕円曲線に代表される三次曲線となると格段に難しくなる。事実、特に その数論的な性質については未だ分かつてゐない事の方が多いくらいで ある。

方程式 y2 = F (x) がどんな図形を表すかを考へてみよう。今、F (x) の 係数は実数であると仮定して、y2 = F (x) を満たす実数の組 (x, y) を xy 平面内の点としてプロットすると、x 軸に関して対称なグラフが得られ る。例へば y2 = x3 − x の場合、図 1 の様になる。

今度は x, y を複素数の範囲で考へることにして、x = x1 + x2i, y = y1 +y2i (ここに i = √−1) と置いてこれを方程式y2 = x3 −x に代入し てみると、

y12 −y2 +2y1y2i = x31 −3x1x2 −x1 +(3x21x2 −x32 −x2)i

となる。この方程式の両辺の実部同志、虚部同志がそれぞれ等しいと置 いて、連立方程式

􏰂

y12 −y2 = x31 −3x1x2 −x1, 2y1y2 =3x21x2−x32−x2, を得る。(x1, x2, y1, y2) は実 4 次元空間内の点の座標であり、それがこの 二つの方程式を満たしてゐると考へれば、(二つの方程式により自由度が 二つ減るので) 上の連立方程式が 4 次元空間内の 2 次元の図形 (曲面) を 表してゐることが納得されよう


保型形式は複雑な変数変換に対して不変性4 を持つ函数である。ここに 言ふ「複雑な変数変換」とは、z􏰁→az+b (a,b,c,dは整数で、ad−bc=1

cz+d 4正確には、本当に不変なのではなく、簡単な変換公式を満たす、といふ事である。を満たすもの) の形のもので、しばしば (正整数 N を固定して) 「c は N の倍数」なる条件が課される。保型形式は数学の多くの分野に現れ、重 要な役割を演じる。物理学や化学に於いても登場するらしい。

め 単純な周期函数でも函数全体の中では 愛 づらしいものであるわけだが、

複雑な変数変換に対しても優雅に振舞ふ保型形式はもつと愛づらしい。全 函数中の貴種である。

さて、保型形式 f(z) は変数変換 z 􏰁→ 1·z+1 = z + 1 に関して不変 (こ

0·z+1 の場合は本当に不変) であることから、

􏰄∞ n=−∞

と展開出来る (フーリエ展開)。f(z) が保型形式であるといふ事の定義の 中には、普通、この展開に於いて「負羃の項は 0」即ち「n < 0 ならば an = 0」なる条件を含める。さらに、以下の文脈に於いては特別な保型 形式のみが大事なのであつて、それは

a0 =0, a1 =1, an は有理数,

m, n が互ひに素ならば amn = aman,

を満たすものである。この様な保型形式には専門的な名前が付けられて ゐるが、ここでは単に「特別な保型形式」とのみ呼んでおかう。

3. 谷山志村予想. 志村五郎は E. Hecke (1887–1947) の理論を発展させ て特別な保型形式の持つ代数幾何学的な意味を明らかにして行く過程に 於いて、特別な保型形式のそれぞれに対応して自然に楕円曲線5 が現れる 事を示した。特別な保型形式 f(z) に対して楕円曲線 E がどの様にして 作られるのかの説明は複雑になるので省略せざるを得ないが、その二つ がどの様な意味で「対応してゐる」のかは比較的容易に説明出来る。こ れを簡単に説明するために、今、楕円曲線 E の方程式 y2 = F(x) の係 数は全て 整数 であると仮定しよう。このとき、各素数 p ごとに、方程式 y2 = F (x) を「p を法として」考へることが出来る。即ち、整数 m, n が

n2 ≡F(m) (modp),

i.e. n2 と F(m)


f(z) =

ane2πinz

但し (m,n) と (m + p,n) や (m,n + p) などとは p を法とした世界では 同じ解と見倣すので、0 􏰅 x < p, 0 􏰅 y < p の範囲で考へる。

さて、特別な保型形式 f(z) = 􏰃 ane2πinz に対して志村が構成した楕円 曲線 E は、次の思ひがけない性質を持つ:「有限個の例外を除く全ての 素数 p に対し

Np = p−ap

が成り立つ。」左辺の Np は代数方程式の解 (mod p) の個数だから代数 的な量であり、右辺の ap は解析的な函数から解析的な道具 (フーリエ展 開) を使つて得られる解析的な量であることに注意されたい。

この様にして、特別な保型形式からそれに対応する楕円曲線が得られ る事が分かつた。逆に、有理数係数の楕円曲線は全てこの様にして特別な 保型形式から得られるであらう、といふのが 谷山志村予想 の内容である。 即ち、楕円曲線と特別な保型形式とが、それらに付随する数列 {Np}p:素数, {ap}p:素数 が本質的に一致するといふ意味に於いて対応するだらう、とい ふのである。

4. Fermat 予想がなぜ谷山志村予想に帰着するか. ところで Fermat 予 想の様な具体的な問題が、なぜ谷山志村予想といふ一見何の関係も無い 様に見える抽象的な予想に帰着されるのだらうか。その手掛りは G. Frey による次のトリックにより与へられた。方程式

xp+yp =zp

を満たす整数解 (x,y,z) = (a,b,c) (但し a, b, c はどれも 0 でなく、互ひ に素) があつたとする。p は 5 以上の素数としてよい。6 これに対し、楕 円曲線

E : y2 = x(x−ap)(x+bp)

を考へる。するとこの楕円曲線はちよつと信じられないくらい「よい性 質」を持つてゐることが分かる。もしこの楕円曲線 E が谷山志村予想に 主張されてゐる如く保型形式 f(z) と対応してゐるとすると、f(z) も「よ い性質」を持たなければならない (この部分をきちんと証明したのが K. Ribet (1990 年) であり、これ自体一つの大定理である)。その「よい性質」 とは、f(z) のレヴェルと呼ばれる整数 N が小さい (実際は N = 2) とい ふ事であ


この操作が E 上の有限個の点集合の中で堂々巡りする事もある。 この様に、E 上の有限個の点からなる集合 V が上の操作により閉ぢてゐ るとき、V には絶対ガロア群 GQ が「比較的見易く」作用するので、V はガロア表現の一つの例になる。勿論一つの楕円曲線 E に対してこの様 な「閉ぢた系」は無数にあり、そのどれもがガロア表現になつてゐるの である。その中でも特に、各素数 p と自然数 n ごとに、p2n 個 の元から 成る或る典型的な系があつて、これが以下の文脈で重要になつて来るの で、それに V (E, pn) といふ名前を付けておかう。

特別な保型形式 f(z) からも、作り方はもう少し抽象的になるが、同様 なガロア表現 V (f, pn) を作れる。

かくして、楕円曲線と保型形式の双方からそれぞれ一つずつ、ガロア 表現の系列 V (E, pn), V (f, pn) (n = 1, 2, 3, ...) が得られるが、「それら10 がガロア表現として同じ性質を持つ」といふ事と「E と f(z) とが谷山志 村予想の意味で対応する」といふ事とは同値である事が証明出来る。そこ で、(我々の目標は E に対して f(z) を対応させる事であるが、そのために は ) E に 対 し て 、V ( E , p n ) と 同 じ 性 質 を 持 つ V ( f , p n ) を 生 ず る f ( z ) を 探 せばよい。これは一般には非常に困難な事であるが、V (E, 21) と V (E, 31) についてだけは例外的にR. Langlands と J. Tunnell によりその様なf(z) が存在する事が知られてゐた (1981 年 — これ自体大定理である)。そこ で V (E, p1) と V (f, p1) とが同じ性質を持つと仮定したとき V (E, p2) と


V (g, p2) とが同じ性質を持つ様な g(z) を見つけられないか?一般に、 

V (E, pn) と V (f, pn) とが同じ性質を持つと仮定したとき、 (∗) V (E, pn+1) と V (g, pn+1) とが同じ性質を持つ様な g(z) を

見つけられないか?

といふ問題を考へよう。p1 の場合を核にして、それをp2 の場合、p3 の 場合、··· と、対応の成り立つ場合をふくらまして行くのである。これは 幾何学では広く見られる11 「変形」(deformation) といふ idea の一形態 である。この視点からは、V (E, pn) たちは V (E, p1) の一つの「変形」で ある、と考へられる。物理学者なら「摂動」(perturbation) と呼ぶかもし れない。

さて、問題は言ひ換へてみたものの、(∗) も相変らず難しい問題である。 この様な問題を攻略するためには、B. Mazur の手になる「ガロア表現の 変形理論」12 を援用するのが便利である。この理論に依ると、V(E,p1) の或る種の変形たちの全体を仕切る環 R と V (f, p1) の或る種の変形たち の全体を仕切る環 T とがあつて、(∗) を示すには

(∗∗) R=T

である事を示せばよい。かうして示すべき事が極めて明快に代数的に定 式化されるのである。この環 R は Galois cohomology と縁が深く代数的 な起源を持ち、環 T は保型形式と縁が深く解析的な起源を持つ。

幾何学に於いて或る曲線を調べるためにその接線を調べたり、解析学に 於いて或る函数を調べるためにその微分を調べたりするのが有効である 様に、この場合もまた環 R, T を直接調べるよりも、それらに付随する、 より簡単で “線型” 的なもの — それをここでは ΩR, ΩT と書いておくが — を調べるのが有効である、即ち ΩR = ΩT を証明すればよい。ところ がこれらは以前から数論に於いて重要な研究対象であつた「Selmer 群」 とか「L 函数の特殊値」などと関係してをり、岩澤理論の専門家である Wiles の最も得意とするところであつた。かくして ΩR = ΩT は証明され、 13 従つて谷山志村予想 (の一部) が、従つて Fermat 予想が、証明された のであ


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