ELGAMA #20ルミアナ編 #8

6 2022/01/03 14:36

「ヒュレル?それって誰?」

ミアが首を傾げた。

「ヒュレルはこいつのドラゴンさ。アケラルのな。」

エリントがレイスの方を顎でしゃくった。

「アケラルって、スルおじさんが言ってたんだけど、『レイスはプレク村に伝わる能力、アケラルの後継者だ!』って。アケラルはドラゴンを呼び出す力なの?」

「うん、まあ、厳密に言ったら、それで必殺技を使ったり…」

 スルはこれを伝えたかったんだな、とレイスは思い立った。

最初の頃はフォーサーの入れ替わり能力がそこまで高威力ではなかった為しょっちゅう自分の体を保っていた。

「なら、レイス、早くヒュレルを呼んでくれ。」

レイスはヒュレルを呼び出した。

 すると、目の前に白いドラゴンが現れた。

《何の用だ?》

________向こうに見える大樹のところまで行きたいんだけど、君の背中に乗せていってくれないかな。

《ピルミに行くつもりか?》

 レイスは驚いた。

今向かっているのがピルミだと初めて知ったのだ。

________うん、そう。

《よかろう、乗せて行ってもよいが、くれぐれも落っこちないようにな。》

「こ、これがヒュレル?」

ミアがそう言うと、ヒュレルはミアの方をじっと見た。

 ミアは「キャッ」と怯えてエリントの背に隠れた。

《あの小娘は誰だ?いつから加わった?》

________ルミアナでだよ。

《他にも気になるところがあるが、いきなり初対面のドラゴンをニックネームで呼ぶとは、とんだ根性の持ち主だな。》

 ヒュレルからの要望により、一人ずつ乗せていってもらうという形になった。(いくらドラゴンとはいえ、重いよな。)

まず最初にレイスが行った。

 大空に飛び立つと、レイスは顔全体に風を感じた。

どこを見ても晴れており、とても気持ち良かった。(ヒュレルはサービスで急降下や旋回のパフォーマンスをしてくれた。)

 エリントもレイスと同じようにサービスしてもらっていた。

だが、ミアの時は真っ直ぐ飛んできた。

急降下や旋回などをしたら、ミアなら気絶してしまうだろう。

 それに、先程のことで少し腹を立てているのもあるだろう。

「サンキューなヒュレル、実に愉快な飛行だったぜ。」

そしてヒュレルはどこかへ消えた。

「さて。」

エリントは大樹を見ながら言った。

「分かってはいたが、ほんとにデカいな。」

首を痛めるほど上を向かなければ頂上が見えないほど大きい。

豊かな自然に囲まれ、自由に暮らせる平和な世界。

 それがレイスの夢だった。

ここのゲートを抜けたら、もうピルミだ。

 おそらく、荒れたままの村があるだろう。

「どちらさんだ?」

突然、どこかから声が聞こえた。

 

「俺たちは、真帝王を倒すために旅している…います。」

エリントがペラペラと喋るが、すぐに口調を改めた。

 年上に向かってタメ口はいけない、と判断したのだろう。

すると、背後から声が聞こえた。

「ほう、それは感心じゃな。」

後ろを振り返ると、そこにはニッコリと笑った老人が杖をついて立っていた。

「わしは、フェリオスアン•イリエンセだ。知っとるか?」

「えっ、今なんて…」

知っているに決まっている。

 まさかここにいるとは思わなかった。

「あなたがイリエンセさんなんですか?ルガンデで、あなたの研究室に行きました。」

「そうか、よく見つけたな。それで、光雑法はできたか?」

「はい、役に立ちました。」

イリエンセはフォッフォッと満足そうに笑った。

「そうか、それは良かった。乱光雑法をだな、ルミアナで武器屋をやっとるスェルンに売り出したんだが、結果は断られた。あいつは自分で武器を作ることもできんくせに、商談を持ち寄ったら踏みにじりよったもんで、わしはそれは腹が立っての。」

「それで、手紙を破ったんですか?」

あの研究室にはスェルンから送られてきた断りの手紙らしきものが破り捨てられていた。

「あぁ、ついカッとなってね。」

イリエンセはイタズラっぽく笑った。

「わしは子供の頃からあいつには腕相撲で負けたことはない。今まで、ずっとだ。会うことがないもんでね。どれ、久しぶりに一戦やってみるかの。」

そしてイリエンセは山の小屋(いつの間にかあった)に向かって歩き出した。

「ちょ、ちょっと待ってください!ゲートはどこにあるんです?」

「ああ、忘れとったわい、ゲートは大樹の麓にあるぞい。」

小屋の中から声が聞こえた。

「ありがとうございました。」

エリントはそうお礼を言うと、2人を振り返った。

「よし、次は…ピルミだな!」

だが、2人とも気分は盛り上がらなかった。

「あー…行こっか。」

 空気を感じ取ったエリントは顔を痙攣らせて言った。

2人とも出身はピルミである。

故郷に帰るのは嫌ではないが、そこは、真帝王に襲われた。

 荒らされた故郷を見るのは誰だって悲しいだろう。

大樹の麓に近寄ると、太くたくましい木の幹の前にゲートが建っているのが見えた。

 さらに近寄り、ゲートまで来ると、ゲートの大きさがよく身にしみた。

「でけぇ…ルガンデのゲートの5倍はあるな。」

ルガンデのゲートは(※1)エリントの身長の約1.5倍ほどの大きさだったが、ルミアナのゲートはそれを遥かに超える大きさだった。

 エリントがゲートに手を触れると、ゲートは動き始めた。

そして、音もなくゲートは開いた。

20話↓

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※1エリントの身長…160cm

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