拝啓、…
小さい頃は恐竜が好きで、自分が傷付いても誰かを守るためなら何も惜しむものはないと敵に立ち向かうヒーローが好きだった。
小学生高学年になってかわいいを中心に考える人が増えて、面倒くさくてそんなものすべて捨てて過ごしてた。
髪はぐしゃぐしゃ、服はパーカーに男子用の七分のズボン。周りは気にしても、何も躊躇いもなく過ごしてた。
中学生になって、後ろ指指されるようになってから、少しだけ身だしなみは整えるようになった。
髪は少しくしゃっと、服は指定のセーラー服(保管充実してなくてシワつき)女子用。
冬は寒くて男子用のズボンが羨ましかった。
そんな流れがあって、少しだけ自分の性別と向き合ったことがある。
ただ、自分が嫌いな女子なだけだ。
可愛くないから可愛いものは身につけない。
可愛くないから努力しても無駄。
可愛くないから、可愛いと思われないようなものを求めてた。
いつかそんな自分を認めてくれる人が要るんじゃないかって。
いつも自分に言い聞かせた。
『お伽噺のようなことが起きるわけない』
そもそも物語に憧れていても、私には恋なんて永遠に無理なことだった。
好きって気持ちが分からなかった。
男子をいいと思えなかった。
恋をしようと思えなかった。
彼氏を作ろうとする人の気持ちが分からなかった。
そういう風に恋について考えると、自分だけじゃなくて異性も嫌いになり始めた。
女子も信じられないし、男子なら信じられない&嫌悪感のダブルコンボを抱いていた。
だから男子が嫌いで、女子高受けた。
いい人ぽっく、嫌われないように、一歩引いて。
言われ始めたのが「清楚」「聖女」とか綺麗なものばっかりで意味が分からなかった。
その言葉すらも嫌悪感を抱きそうな自分の前に天使が現れた。
本当に綺麗な子だった。
私に向けたわけではないその笑顔も。
他の人より細くて白い体も。
それでいて運動ができ、頭もいいという才能も。
それなのに声がとてもかっこいいって言うギャップも。
全部煌めいて見えて。
一瞬で虜になった。
この瞬間もその子を思ってる。
でも、やっぱり好きではなくて。
推しなんだと思う。
その子のためなら何でもできそうな気がして。
でも、付き合いたいとか烏滸がましいこと思えない。
彼女が幸せになるために、私は彼女を守る騎士にだってなれる。
男の子に生まれたかった。
そうしたらきっと、こんなにもなりたいと叶うわけないと思っても願わずに彼女を守る騎士になれたんだろう。
お願いです、神様。
私をこれ以上惨めにしないでください。