ELGAMA #26 アリゴ編 #5 決着
「エリント!」
ミアはゆっくりと立ち上がり、エリントに歩み寄る。
「おい、こっちに来るな!」
エリントは光雑法を打った。
ミアに光雑法が当たったが、少し怯んだだけで、歩みをやめなかった。
「エリント。」
「来るんじゃねえって!」
エリントが必死に光雑法を打つ。
「いたっ!」
光雑法がミアの顔に直撃する。
ミアは少し後ろに吹き飛んだが、顔を押さえてまた立ち上がった。
「もう一回、一緒に行こうよ。」
「やめろ。」
エリントが何回光雑法を打っても、ミアは顔の所々に浅い傷を刻ませて立ち上がる。
「やめろ、ほんとにやるぞ。」
ミアが歩み寄った。
「ミア!早く逃げて!」
レイスの言うことも聞かず、ミアは歩み続けた。
レイスはもう一度叫ぼうとしたが、頭が痛み、そのまま気を失った。
「ミア…」
エリントは悔しそうに目を瞑ると、剣を振るった。
剣先からは黒色の闇が発射された。
ミアに闇が当たる。
ミアは体を大きく引きずりながら吹き飛んだ。
ミアは、倒れたまま動かなかった。
エリントの激しい呼吸だけが辺りに響く。
「ミア…」
エリントはまだ状況を理解できていないようだ。
「えり…ん…と……」
すると、ミアが、体を震えさせながら立ち上がった。
震えながら歩み続けるミアに、エリントは声を失い、ただ見ることしかできなかった。
ミアはゆっくりと、着実にエリントに近付いた。
そして、ついにエリントのすぐ側までやってきた。
段々と大きくなるミアの息遣いは、ミアの限界と反比例しているのだろうか。
ミアはエリントの顔の高さまで手をあげた。
そして、ヘナヘナと、エリントの顔に痛くも痒くもないパンチをした。
「ふふ…」
ミアはニッコリと笑って、言った。
「エリント、私、ちゃんとじぶんでこうげき、できたでしょ?…」
段々とミアの目が細くなってきたと思うと、ミアはその場に倒れ込んだ。
エリントはその場にへたり込み、呆然としていた。
そして、誰に向けたものでもない言葉を発した。
「…ばかやろう……」
**
目が覚めると、目の前にはただの木目が広がっていた。
________なんだ木目か…ん?木目?
レイスはガバッと飛び起きた。
「よう、お目覚めのようだな。」
横に座っているのはエリントだった。
「なんでエリントがここに?…」
レイスの覚えているには、ミアがエリントの所に歩いて行ったところまでだ。
「そういえばミアは?」
「待て、質問を二個以上重ねるんじゃねえ。ミアは大丈夫だ。……重傷だが。俺はお前らのとこに戻ることにした。」
「え?そりゃまたなんで?」
エリントは頬杖をついて溜息を吐いた。
「まったく、あいつの笑顔にゃ負けたぜ…」
「なんかカッコ付けてる?」
「まあまあ安静にしときな、傷が治んねぇだろ。まだアリゴの番人を倒してないぜ?」
「そっか、すっかり忘れてたよ。」
エリントが去ると、レイスは目を閉じ、眠りについた。
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