「君に捧げる並行世界」~第二話~
「君に捧げる並行世界」~第二話~
「…行くしか、ないんだ。」
覚悟を決めて私は校舎裏に顔を出した。
「えぇ~遅すぎ。1分遅れなんだけど。どうしてくれんの??ww」
からからとした笑い声が響く。その声が私の鼓動を速めた。声が出ない私に女生徒は冷たい声を投げかけた。
「ちょっと、なんか言ったら?なんで無視すんの?」
鋭い視線が体に突き刺さった。背中がじっとりと汗ばむ。
琴音がいじめの対象になったのは小さなきっかけだった。廊下で先生に言われた提出物を運んでいるとある男子生徒が私に声をかけてくれた。
「天野原さん、それ重そうだね。大丈夫?俺が持つよ。」
と言ってすべての荷物を彼が運んでくれた。
「困ったときは俺に言ってくれればいいから。体力あるし。」
そういって軽やかに手を振って走っていった、彼。その時は胸がどきどきとしてこそばゆい気持ちだったがどうやらそれを彼のファンを自称する女生徒が私をよく思わなかったらしい。瞬く間に私は嫌われていき、いじめに発展した。いじめなんて世の中に腐るほどある。そういってしまえば終わりだが、琴音にとって苦しい日々以外の何物でもなかった。彼の好意が琴音には悪意のように感じ取れた。
「あっ今日はね、とっておきのプレゼントをしようかと思ってたの。」
リーダー格の女子が可愛い顔を笑顔にして言う。私にはそれが笑顔ではないように見えた。
「ほら、これ、何か分かる?」
銀色の棒のようなものを女生徒から見せられる―金属バットだ。そう分かった瞬間に呼吸が荒くなる。足が震えて上手く動けない。今までも、蹴られたり殴られたり、そういう事は何回もあった。でも、金属バット。金属。そんな事実がじわじわと頭に染み込み心臓が音を大きくする。
「じゃあまず私からやっていい?」
リーダー格の女子は他の女子に確認をする。後ろの女子は「いっちゃって!w」「やっぱ一発目は華弥だよねww」と笑っている。華弥と呼ばれた女子は私を見てまたからからと笑った。その声が私の頭の中でこだまする。
そして、バットを構えた。
「じゃあ、行くよ~!」
ー「えぇ~ww私を交ぜないなんて酷いよ~w私も入れてっ!」
※画像はhttps://picrew.me/image_maker/190588で作りました。この作品が少しでもいいなと思った方はいいねとフォロー、コメントをよろしくお願いします!(高望み)