plants world なんのひねりもない物語  #2

8 2022/03/19 22:50

 いつの間にか、エーリュウは僕の目の前から消え去っていた。

辺りを見回しても、誰の気配も感じない。

 僕は薄暗い森を抜け、町に戻った。

とりあえず、ここの住人と話がしたかった。

具体的な山への行き方、それをエーリュウは教えてくれなかったのだ。

町は、僕が暮らしていた町となんら変わりはないほど平和だ。

 道路にはアスファルトが敷かれている。

だが、車は走っていないようだ。その証拠に、道路の真ん中では老人がろうそくを販売していた。

「どうしたボウズ、迷子か?」

 

木造の家の前を通り過ぎようとした時だ。

 どこからか声が聞こえた。少し高めの男性の声だ。

後ろを振り向くと、いつの間にか男性が立っていた。

 男は僕の近くにゆっくりと歩み寄って来ると、誰も頼んでいないにも関わらず、自己紹介を始めた。

「オレはワタル、この辺で適当に住んでる男だ。」

適当な言葉が思い浮かばずに黙っていると、ワタルは呆れた顔をして言った。

「おい、あんた、人が自己紹介をしてるってのに、なに黙って突っ立ってるんだ?」

「あ、はい、すいません」

僕の口から、感情の籠もっていない謝罪が漏れ出した。

 ワタルはそれを感じ取ったのか、眉間にシワを寄せた。

「オレは棒返事が一番嫌いだ。」

そう言い残すと、彼はズタズタ足音を鳴らし、去っていった。

「棒返事」という謎の言葉を残して。

 次に僕は、先程ろうそくを販売していた老人の方に行ってみることにした。

すっかり本来の役目を失ってしまった道路の上を歩き、老人が座る場所へ向かった。

 もうほとんど人はいなかったが、老人は、残ったわずかな人々と、楽しそうに談笑していた。

ろうそくの入っていた箱を覗き込んでみると、まだ2、3本余っているのが見えた。

 

「すいません。ちょっといいですか?」

ワタルはどこかに行ってしまったし、せっかくなら、山への行き方を聞いておきたい。

 僕が呼び掛けると、老人はゆっくりと後ろを振り返…らず、代わりに「前から話しかけなさい、後ろを振り向くのは骨が折れる」と言い放った。

 僕はわざわざ老人の前に周り、もう一度話しかけた。

だが老人は、僕が話し出すよりも先に僕の口の前に手をかざし、制した。

驚いた顔をして、老人の顔を見つめると、老人は、静かに笑った。

「少し待ちなさい、わしゃ喉がからからじゃよ、あなたも立派な青年なら、もうちょっと老人を気遣いなさい」

老人はどこからともなくペットボトルを取り出して、飲み始めた。

 待つこと5分、老人はやっと水を飲み干した。

老人は水を飲み終わるまでの間、僕は立ち去ることも、話しかけることも許されなかった。

 一度、老人のはげた頭に向かって、水を思い切りかけてやりたくなるのも無理はないだろう。

もっとも、大目玉を食らいたくはないし、山への行き方も教えてもらわなければいけないので、やめた。

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タグ: plantsworld remake

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その他2022/03/19 22:50:25 [通報] [非表示] フォローする
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投稿遅れてしまい、誠に申し訳ございません…

自分への罰として、寒風摩擦を始めた方がいいでしょうかね

いえ、罰という言い方はやめましょうか"己を正す行為"とでもお呼びすることにします。


2: chasers @cyalume3 2022/03/20 10:09:25 通報 非表示

>>1
寒風摩擦はこの時期にやると肌荒れますよ~……

今回も面白かったです‼

そちらのペースで構わないので頑張って下さいね


>>2
いえいえ、読んでくださりありがとうございました。

Σ(゚д゚ ;)初めて知りました、ではやめておきますね


4: chasers @cyalume3 2022/03/20 11:45:45 通報 非表示

>>3
花粉が相まってヤバイらしいですからね……


>>4
( ̄▽ ̄)あ、花粉の薬を飲むの忘れてました

どうりで目が痒いんですね


最後はどんでん返しで驚かせるつもりなので、伏線とか頑張って探してみてください


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