【ミュージック小説】Eve:あの娘シークレット
Eveのあの娘シークレットを元にした短編小説です。
歌詞は入っていません。ご安心を()
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神原悠希 かんばらゆうき
紅嶋明莉 くれしまあかり
熊野竣太 くまのしゅんた
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今日のことだって、きっと記憶にすら残っていないんだろうな……。
僕は歩きながら、溜息をついた。
紅嶋、明莉───さっき、やっと口にできた名前を、心の中で繰り返す。
振り返って微笑んだ彼女の表情が、目に焼き付いて離れない。
僕たち陸上部の部員の中でも、彼女は一際綺麗で目立っていた。
いつもトップの記録をキープしていて、部員は男女共に、彼女に憧れていた。
僕もそのうちの一人だった。
でも、今日は高根の花である彼女に、初めて話しかけることができた。話しかけるといっても、彼女の忘れていったタオルを届けただけだけれど……。
これは、毎日彼女に見惚れているだけの僕にとって大きな進歩だ。けれど、彼女にとっては普通の日常にしか過ぎない。きっと僕のことなんてすぐに忘れてしまうだろう。
せめて、話が出来たら嬉しいけれど……たぶん緊張しすぎて心臓が破裂してしまう。
ぼんやりと、そんなことを考えながら歩いていると、横断歩道に差し掛かった。
殆ど毎日、学校に行くときに通る横断歩道だ。でも、なんだか妙な違和感を感じて、顔をあげて通りをじっと見てみた。
向こう側の通りに、見慣れない店があった。気づかないうちにできたのかもしれない。店名は崩したような英文でよく読めないけれど、ポップな黄色の蛍光色で書かれている。
隣に、片手をあげたオレンジ色のクマの大きな人形があった。どこかで見かけたことがある気がする。有名なキャラクターか何かだろうか。
ちょっと気になって、僕は店のドアに近づいてみた。ウィーンと音がして、自動ドアが開く。
中にはクマのぬいぐるみが沢山あった。どれもパステルカラーで色鮮やかだ。水玉模様のクマやリボンのついたクマ、お腹に星の付いたクマなど色々あった。
店内を回って、おかしいな、と思った。僕の他に人が一人もいない。店員さんらしき人もいないし、お客さんもいない。休みだったのかなと思ったけれど、それならばドアは開いていないし、電気だってついていないはずだ。
貼り紙があったかもしれないと思い、もう一度ドアを見に行ったが、何もなかった。これがこの店の仕様なのかもしれない、と一人で変に納得する。
開いた自動ドアの間から、通りの向こうの景色が見えた。誰か歩いている。僕は目を凝らしてその人の顔を見た。と同時に、胸が跳ね上がった。
彼女だ。どうしてこんなところに……。もしかしたら今まで気づいていなかっただけで、家の方向が一緒なのかもしれない。
これは二度とないチャンスだ。絶対に偶然なんかじゃない。僕は走り出そうとした。
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続きます‼多分()
つたない文章ですみません。(