◊ 小説 機器廻街 前編

2023/02/23 22:35

機器廻街   ききかいがい  前編

凪島魅玲   Nagisima Mirei

もくじ

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終電の電車

見慣れない街並み(1)

見慣れない街並み(2)

もういちど

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終電の電車

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 愛菜は、住んでいる家が嫌いだ。

 狭くて、所々ボロボロ。おまけに自分の部屋も無いのだ。まぁ、もしもあってもたいしてする事は無い。スマホやパソコンも無い。何年か前に発売されたゲーム機が1台ある。とてもやりこんでいて好きなのだが、いつか壊れると思うと悲しい。

 そんな家から離れている時間は何だろうが好きだ。電車の中、学校、友達の家…ボロボロの家になんか無い楽しさがある。できるなら、ずっといたい。

 そう思いながら愛菜は、電車でお出かけをする。勿論、出かけることは親にも言った。愛菜は高校生だからか、すんなりと許可された。元々海と山が近いので、電車から見える景色を見るのがとても好きだった。一緒に持っていくゲーム機にはカメラ機能があって、いい景色を撮影していた。しかも切符も安いし。電車はゆっくりと進むし、簡単に寝れる。田舎だからか、電車には大抵人が乗ってない。まさに貸切状態だ。

 その楽しさは、現実とかけ離れたようだった。

 でも、もう終わってしまう…。窓の景色は一面真っ青で、三日月が海に映っている。最後にその景色を見て、愛菜はぐったりと眠りについた。

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見慣れない街並み(1)

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 「次は…… …ー。 …ー。」

 何回も聞いた声が耳を劈く。

 「うぅーん…。」

 愛菜は目が覚めた。景色を見たが、見慣れない建物が沢山ある。畑ばっかりだったのに。空も夕焼けだ。

 …というか、何時間寝たんだ?そう思い、最後に撮影したゲーム機を開いてみる。撮影した時間は20時54分…。ゲーム機で今の時間を見てみた。

 「…あれ?」

 いつもなら右上に時計や日付が表示されているのに、消えている。それ以外にも、ネットワーク、歩数、バッテリーなども表示されていたのだが、全て消えていた。

 「うっそぉ…壊れたんかな…。」

 愛菜はとても悲しかった。楽しい時間だったのに、長く使っていたゲーム機が壊れる。愛菜にとっては、とても辛いことなのだ。

 悲しげな愛菜の背後に、一人の男性が来た。

 「お客様…降りて貰ってもよろしいでしょうか…。」

 「あっ。ごめんなさい…。」

 とっさに愛菜は降りた。恥ずかしかった。男性は車掌さんなのかも分からないままだったが、そんなことは消し去るようなものが目の前にあったのだ。

続く。

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