秘密の場所

ある3人がいました

3人はある泉を見つけました

泉は暗く不気味な森の奥にあり、普通に過ごしていたら見つけられなさそうでした

とても喉が乾いていた3人は泉の水を飲みました

その水を飲んだ3人は心も体も元気になり、幸せな気持ちになりました

水は石を綺麗に磨き、植物を元気に、美しくさせることができました

3人はこの場所を"アンダーグラウンド=地下のような秘密の場所"と名付け、自分たちの友達以外には話さないよう約束しました

しばらくは平和が続きました

時々泉に向かう人を見てついて行った人、3人やその友達から教えられた人が新しく泉に来たが、特に何も起こらず穏やかな日々を皆過ごしていました

しかしある日、泉を見つけた3人とは別の3人がこの泉を知ってしまいました

"目立ちたがり屋"は色々な村を訪れ、泉について話した

泉を訪れる人の数は何倍にも増えました

"悪知恵"はこっそりと泉の水を竹に入れ、それを遠くの村で高額で売り始めました

悪知恵は大きな富を得ました

"正義面"は泉を多くの人が使うためにはルールが必要だと考え、泉の利用を制限しました

そして、遠くの村の人々が利用しにくいのはいけないことだと考え、泉と各地の村を用水路で繋ぎました

大勢の人が泉を使い、泉は常に賑わっていました

泉を見つけた3人は困ってしまいました

前みたいに自由に、穏やかに泉で楽しみたい、3人はそう思いました

そのことを皆に伝えると皆は顔をしかめて言いました

「君たちだけ使うのは卑怯だぞ。僕たちにも泉を使う権利はある」

「ルールがなかったら危ないじゃないか」

「人が多いほうが幸せも多いよ」

どれも正しい意見です

しかし3人はモヤモヤしていました

さらに日々が過ぎて、泉に"偉い人"がやってきました

偉い人は言いました

「ここを私の土地とし、皆のために色々なものを作るぞ！」

偉い人は優しいことで有名でした。ほとんどの人は彼に賛成しました

偉い人は泉の周りの森を切り開き、酒場を作り畑を作り、公園を作り釣り堀を作り・・・・

とにかくたくさんの建物を建てました

人々は喜びました

さらに多くの人々が泉を訪れました

泉はもはや"アンダーグラウンド"ではなくなっていました

3人のうち1人は呆れ果て、泉から去り2度と姿を見せませんでした

もう1人は泉は賑やかであるべきだと考えを変え、3人の最後の1人を残して去ってしまいました

2人がいなくなって数日たったある日、泉の水の色がみるみるくすみ始めました

泉のそこにはゴミが溜まり、ヘドロが悪臭を放ちました

森を切り開き、周囲にたくさんの建物を建てたことが原因でしょう

汚い水は用水路を通して村の田畑に流れ、作物は腐ってしまいました

泉はすっかり嫌われ者になってしまいました

泉の汚水のことを聞いた、泉を使ったことのない隣の国の人々もその泉を嫌いました

人々は怒り、偉い人を責めました

そしたら偉い人は言いました

「私は噂を聞いてやってきただけだ」

これを聞いた人々は目立ちたがり屋、悪知恵、正義面を責めました

彼らは各々言いました

「僕は聞いた内容を話しただけなんだ」

「俺だって被害者だ」

「私は決まりを作り義務を果たした。責任はあの泉を広めた奴だ」

すると全ての人々が3人の中で唯一泉に残った1人を責めました

怖くなった1人は家に籠もりましたが、毎日朝から晩まで罵声が自分の家を貫きます

彼は耳を手で塞ぎ、うずくまった状態で呟きました

「君たちが好き勝手にしたからだろ。なんで僕がとばっちりを受けなきゃいけないんだ」

「あぁ、神様、どうか、また静かに泉を楽しませて下さい」