迷い込んじゃった。【1】

＊オリジナル小説…不思議の国のアリスがモチーフとなっていますが、キャラクターは全て創作です

　

　

「アナタは曲を聴くのが好きなノ？」

　

ちいさな少女がそう問いかけてきた。

「え、いや？」

　

「ふーん、ヘッドホンしてるから好きなのかなって思ったノ。」

　

　

　

「ああ。ただデザインが好きで付けてるだけだよ。」

曲は流しっぱなしだと危ないしね。

「そう。…アナタ、綺麗な目をしてるわネ」

　

何十センチも低い少女を見下ろす。黒い瞳がじっと見つめる。

　

　

　

　

「なんていうのかしら、海の底を見ている気分だワ」

「それって褒めてる？」

　

　

「褒めてるわよ、あたしよりも年上の割には子供っぽいわねアナタ。」

子供っぽいってさ。

「…なんか微妙だな」

　

　

「そう。…アナタ、ここに迷い込んできたノ？」

「あー、まあそんなところ」

　

「ココはね、森の開いた小道よ。御伽話によく出てきそうなネ」

少女はそう僕の隣をちょこん、と座った。

　

　

「アナタはアリスで、アタシは…ウサギかしラ」

「それって、あの不思議の国のアリスの？」

　

「ええ。早く起きないとネ」

　

「…どういうこと？」

　

　

「フフフ。それより、あっちに綺麗な薔薇の木があるの。知ってタ？」

　

「初めて聞いたな」

「行ってみる？幻想的できっと見惚れるワ」

　

「うん、行ってみようかな」

　

「そう。じゃあついてきテ。」

そう少女は立ち上がるとすぐに駆けてしまった。その背中を追いかける。

　

　

「子供だから足が早いなあ…」

　

　

　

　

「知らない人に着いていっちゃダメって、知ってタ？」

少女はなにかを呟いていたが、僕にはほとんど曖昧で聞こえなかった。