おでんの季節
幻想郷の仲冬の頃、ある1人の夜雀は1人で考え事をしていた。
いつもは八目鰻の屋台を開いているが、最近はメニューがありきたりなのか、あまり客が来ないのだ。メニューは新しく変えたのだが、それでも人が来ることは少なかった。
ミスティア「うーん……もっと工夫が必要ね……でもアイデアがないのよねぇ……」
頭を抱えて悩み続ける。しかし中々アイディアが出てこないのだ。
外は吹雪が舞っていて足の指先がひんやり冷えている。
「寒っ」
と声がでる。
ミスティア「足先の冷えとってのもやだなぁ……あっ」
ミスティアは何か閃いた途端、新しくメニュー表を作り変えたのだった...
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ある日の冬の夜、お転婆な氷精は1人彷徨っていた..というかいつも何も考えてないので放浪と言った方が正しい。
普通の人間ならばあまり外に出たがらない気候だが氷精の彼女ならばむしろ過ごしやすい季節だった。
「あたい、どこ行ってるんだろう……?」
と悩んでいたら、なんと小さな屋台を見つけた。暖簾がかかっていた。彼女は単純な妖怪であるので、すぐに飛びつき中に入る。
中は熱気で暖かかった。そして中の店員に元気よく挨拶をする。
チルノ「あんた!ここ何か売ってんの?」
ミスティアは急な客に驚く。
ここの屋台は今までのものを新調した真新しいものだったのだ。つまり目の前の氷精が第一の客であったのだった。
「おお!やっと来た!いらっしゃい。ここはおでん屋台よ」
"おでん"という単語はチルノにとって聞き慣れないものだった。
おでんとは何なのか。ミスティアは屋台の奥から丼とおでん種、汁を出す。
「最近新しくメニューに加えたのよ!おでんってやつなんだけどね」
チルノは首を傾げながら尋ねる。
「それって食べ物?美味しいの?」
「ええ。とりあえず食べてみてよ」
おでんの具を器によそって、箸と一緒に出す。幻想郷ではまず珍しい和風で屋台にぴったりなおでんであった。
器の中には見るからに汁の染みてそうな大根、ふっくらとした卵、そして見慣れない黄土色の油揚げに何がが包まれている物があった。チルノは興味津々にそれを見つめた。「これがおでんかぁ……」
チルノは箸を上手に使いこなして大根を掴んだ。そしてパクッと口に放り込んだ。すると口の中で出汁が一気に溢れ出した。その美味しさに彼女は目を輝かせた。
「うまい!」
おでんの美味しさに感動しつつ、今度は卵を食べてみることにする。割ると中からとろりとした半熟卵が現れた。少し冷ますとそれを半分口に入れてみた……
なかの黄身が舌をとろりと流れる。
おでんとはこんなにも美味しいものだったのか、とチルノは驚愕した。
次に巾着のような油揚げを口に入れた。油揚げを前歯で噛みちぎった瞬間中にあるものの正体に気づいた。
「おもちだ!」
油揚げのえもいわれぬ食感と餅の柔らかい食感が絶妙に交わりそれはチルノを虜にした。
思わず声が出る。「おもちだ!おもち!」
ミスティアは得意げな顔になり、屋台から顔を出す。「そう!やっぱりこれ美味しいでしょ?」
チルノは何度も頷いて同意した。
そして気づいたら完食していた。
量はそこまで多くなかったがそれでもチルノの満足度は高かった。
チルノは夜雀の店主に笑顔で
「また来る!」
「是非ぃ〜」
そう言いながらチルノのは霧の湖へと向かうのだった...
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久しぶりにSS書くから文が破錠してない事を祈る
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