小説 / 黒の結晶

2024/05/21 21:43

「喋れない」ということが、どれだけ苦しいのか。

僕はまだ、彼との間に壁を感じた。

 

 

 

 

 

 

――黒の結晶――

 

 

 

 

 

いままで知らぬ間に無理をしていたのか、自分は喋れなくなってしまった。

君は気遣ってくれる。何が言いたいのか察してくれる。

そんな現状に自分が甘えているようで、「このままじゃ悪いよ」と伝えてみたことがあった。

すると、「俺、大変じゃないよ?きちんと意思疎通できてるし、よくない?それに、ちゃんと何が言いたいか分かった時は俺が嬉しいしな」

なんてことをて言っていた。加えて、「てかお前、優しすぎるんだよ。喋れてた頃から愚痴の一つもこぼさねぇし」 とも。

 

 

 

だから悪かったんだろうか。愚痴の一つでもこぼしておけば、僕はこうならなかったのか。きっと僕がしゃべれないのは、ストレスのせいなんだろうな。

 

くるしい。

治れよ、この愚図が。

意味わかんないよ。急に喋れなくなって、声での表現の自由を奪われたようで、悔しいよ。本当は泣き叫びたいよ。

(泣き叫びたいって、声も出ないのにさけぶとか無理だろ)

咄嗟の矛盾に僕は笑うしかない。

 

 

 

 

 

 

あいつは、きっと自分を許してない。

なんかそんな気がする。喋れない自分も許してないし、喋れた頃の自分も、ずっと追い詰めていたんだろうな。

もしそうだとして、これ以上ストレスを与えるわけにはいかない。

だから俺は、あいつを全力でサポートすると決めた。

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