なんか小説
20xx年 2/6
藍色の流星が流れた。真っ昼間に現れたそれは、太陽から主役の座を奪い、街を行き交う人々の視線をも掻っ攫っていった。僅か7秒の出来事だった。
この日、この時、全てが始まったのだ。
たとえ、もう一度俺にチャンスが与えられたとしても、あの結末から逃れることはできないだろう。
日本だけでなく、世界中で魔法の力を持つ者が現れたのだから。
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「おにーーーーちゃーーーーーん!早く来てーーーーーーー!」
泣き声にも近い妹の叫び声で飛び起き、フラつきながらも部屋に駆けつけた。
今回は何が犠牲になったのか、出費を考えるだけで目をそらしたくなるが、そういうわけにもいかない。
「優花(ゆうか)、ドア開けるぞ」
_______ドアを開けると、昨日よりも酷い有り様だった。ベッドはトーストに、クッションは卵焼き、カーペットはチョコレート。優花の服はポテトサラダのようになっていた。壁に被害がないだけマシだろうか。
「……服にも触れたのか。いやそれよりも手袋はどこにやったんだ!?なんで外したんだ!?」
目を泳がせ、もじもじしながら言いづらそうに口を開く。
「寝てるときに外れちゃったみたいで……。探そうとして、色々触っちゃって……。」
肝心の手袋は、ベッドの下にあった。トーストに変わったベッドの生暖かさを感じながら慎重に手袋を手に取り、渡す。
「ありがとうお兄ちゃん!そして……その…………ごめんなさい……。」
「いや、俺も悪かった。怒鳴ったりして。俺は片付けして、今後の対策考えとくから、優花はとりあえず風呂入ってこい」
「うん…………。」
食べ物になってしまったものを集めて、小さくしてゴミ袋に詰める。
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あの流星が流れた日から、俺の妹は不思議な力を使うようになった。世間では魔法と呼ばれている。
魔法が使えるようになったのは、若い女性で、中でも300人に1人ほどだ。彼女らのことを人々は魔法少女と呼んでいる。
魔法の種類は様々で、目を合わせるだけで服従させたり、一度行ったところへ瞬間的に移動できたり、火を出し自在に操ったりなど、同じ魔法を使う者は現時点で一人もいない。
そして、俺の妹の魔法はというと、手で触れた対象を食べ物に変えるという魔法だ。
しかしこれがかなり大雑把で、優花が食べ物でないと認識したもの全てが、その対象らしい。ピーマンをマシュマロにしたことから、そう推測している。
変わる食べ物も、その時、優花が食べたいと思ったものに変わるようだ。
変わった食べ物は、味はおいしいらしいが、食べても食べても食べた気がせず、逆にお腹が空いてしまうらしい。本当に不思議な魔法だ。
最初は苦労した。パニックを起こしながら優花が家具を食べ物にしていき、それを食べて、お腹が空いたと大号泣。俺はまさか俺の妹が魔法少女になるなんて夢にも思っていなかった。
ググった対処方を参考にして、妹の魔法を推測。発動条件になるらしい手をテープでグルグル巻きにした。テープはグミに変わったのが不幸中の幸いだった。
ニュースでは、国が魔法少女についての対策を立てるとのことで、情報提供を呼びかけていた。すぐに妹の状態を報告した。きっとどうにかなると信じて。
それから1週間ほど、身の回りのことは全て俺がした。お互い学校も休んだ。手が使えないのは本当に不便だ。例に挙げるとキリがない。手を使うことは全て俺がしていたと思ってくれていい。
いつまでこんな日々が続くのだろうか。
慣れない生活に俺も優花も限界だった。
あまりにも長く感じた1週間が経ったある日、国から荷物が届いた。小包の中に薄い赤茶色の手袋が3双入っていた。
魔法少女の魔法を相殺する物質を混ぜたものらしい。
グルグル巻きにしたグミを慎重に取り、優花に手袋を渡した。震える手で手袋に触れる。手袋は手袋のままだ。
「私、また、前みたいに、生活、できるの?」
か細い声でぽつぽつと言いながら、手袋をはめる。
「お、お兄ちゃん。手、繋いでみてもいいかな?」
手を前にし、ぎこちないポーズと声で言う。
「あぁ、いいぞ。」
優花と手を繋ぐ。俺はどうにもならなかった。
このときの優花の喜び様と言ったらなかった。
また、前みたいな日常を送れる、お互いそう思っていたが、話は冒頭に戻る。
____
手袋が外れないように輪ゴムで固定するか?、などと考えてる内に部屋の片付けが終わった。
優花も風呂から上がったらしい。
濡れたセミロングの黒髪をタオルで拭きながら部屋に入ってきた。
「お風呂上がったよ。お兄ちゃんも今日から学校行くんだよね?……私、こんなんで大丈夫かな?」
「手袋は輪ゴム…………いや、髪ゴムか何かで固定して、無理そうだったら早退しても良いと思うぞ。先生にも言っといたから、そこまで心配するな。みんなも、優花が魔法少女になりたくてなったわけじゃないってわかってるよ。」
うん、と小さくうなづき、部屋に沈黙が流れる。
「さて、朝ご飯はトーストにでもしようかね。まだ登校するまで時間はある。優花は、そうだな。次に買うカーペットの柄でも考えといてくれ。」
明るく、茶化すように言った。
「ふふ。なにそれ!もう次で買うの最後にするんだから!」
「お前それ何回言うつもりだよ」
「もう!!早くご飯作ってよ!」
「はいはい」
笑顔が戻ったようでよかった。学校に行くのは不安もあるが、きっと上手くいくだろうと思えた。
_____あとがきです_______
長くなってしまって申し訳ないです。まだまだ続く予定です。
今回はざっと世界観説明って感じです。
先に言っておきますが、後からグロい表現が出てきます。
この物語はハッピーエンドではありません。
小説初心者🔰のため、拙いところもありますが、これからも頑張る予定です!
読んでくださった方は読んでくださり、ありがとうございます!!
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