きれいなかたちで
私の何処がいけなかったのだろう
スマホから爆音のアラームが鳴り、私は目を覚ました。
体は重いし起きる気になどなれなかったが、頑張って体を起こし制服を手に取る。
だがスカートに足を通そうとした途端に目眩がして立ち上がれなくなってしまったのだ。
多分、体が拒否しているのだろう。
でもそんなの関係ない。学校にいかないなど親が許してくれるわけがない。
無理やりスカートを足に通しシャツを着る。鏡の前でリボンを調整したら準備はできた。
階段を降りてリビングに向かう。
「はるか、おはよう」
と聞こえた方を振り向かなくてもお母さんと分かる。
だから「うん、おはよう」と返して椅子につく。
朝はだいたいパンと牛乳。どちらもこだわってはいないが今まで飽きることもなかった。
パンをくわえていると
「学校、楽しい?」
と訪ねられる。私は咄嗟にくわえていたパンを手に取り、優しく微笑んで
「毎日楽しいよ」
と答える。お母さんは安心したような顔で、なら良かった、とつぶやいていた。
残っているパンを食べきり、牛乳をのみ干してごちそうさまでした、と言ってから洗面所に向かって歯を磨く。
洗面所の鏡で自分の顔をまじまじと見つめる。
違和感なく笑えていただろうか。
そんなことを考えていると後ろから妹が背中を押してきて、邪魔!!と言い私をはねのけ歯を磨き出した。
私はなにも言わずマスクを付け通学鞄を手に取り
「行ってきます」
と言い残し家を出た。
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教室に入ったときにまず目に入ったのは落書きで汚れ、更に倒されている机だった。
私はその机に向かい足を進める。
周りから冷やかすようなクスクスという笑い声が聞こえてくる。
無言で机をたたせ、雑巾を用意して落書きを順番に落としていく。
これが日常茶飯事になっているのだ。とても辛いが、耐えられないほどではなかった。適当に対処しとけばどうにかなった。
だからなにも言わず過ごしていた。
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私は今体育館裏に居る。クラスのマリンという女子に呼び出されたのだ。
多分私の方が早くついたのだろう。まだ誰も居なかった。
そわそわしながら待っていた。そしたら複数人の女子が私の前に現れた。
その光景に目を疑った。
ちりとりにゴキブリが入っていて、他の女子はほうきを持っていたのだ。
何をされるのか分からないけれど怖くて足が震えてしまっていた。
そして次の瞬間、一人の女子の合図と共に私は二人の女子に取り押さえられ、胸元のボタンを外されたのだ。恐怖で涙を流していると、一人の女子が私の開けた胸元にゴキブリを放り込んできた。
恐怖と気持ち悪さで叫び声をあげ、暴れまわった。
するとマリンが私の顔に何かは分からないスプレーをかけてきた。それが目に刺激を与えたのか目が痛みだし、その場で私はうずくまった。
ゴキブリがどこかにいくと私を取り押さえていた二人の女子は手を離し、さっさと帰っていった。
涙を流し震えている私を見てマリンは口元を歪ませて意地悪い顔をする。
「あんたに効くのってやっぱ虫だよね
なかなか折れないからすごい気になってて~」
そんなことをつらつらと語られている間に私は怖くて怖くてつい漏らしてしまった。
私は恥ずかしくて顔を真っ赤にした。
それを見たマリンが虫を見るような目で私を見て、写真を撮ってから帰っていったのだ。
どうすることも出来なくてそのまま私は帰ることにした。
なにも言わずに帰ってきたから親も驚いていて、先生からも電話がかかってきていた。
本当にしんどかったとだけ親に伝え、私は部屋のドアを閉めた。
壁にもたれ、頭をうずめる。どうしてこうなったのだろう?
私はなにもしていない。
ふと視界に入ったスマホの画面が光る。
【星屑高校2年1組☆
マリリンが写真を送信しました】
私はものすごい勢いでスマホを手に取り、グルラの画面を開く。
そして今さっき送られてきた写真は私が顔を真っ赤にして震え、泣きながら漏らしている写真だったのだ。
声が喉につっかえて出ない。
ど う し て ?
ただそれだけが脳をよぎった。
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未完成