小説 タイトル思いつかん。
わたくしは最悪な人です。
人からのお願いも直ぐに忘れ、何事も行き当たりばったりという有り様です。
それだけならまだしも…
とある大きな過ちを犯してしまいました。
昔から、そんな最低の性格だったわたくしに貴方は、
「だらしがない。生きている価値などない。まるで排泄物を固めて作ったかのような人間。産まなければよかった。お前はもっと息を潜めて生きろ。」
とよく言いました。
ある意味当然です。言われても仕方がないでしょう。
……でも、
そんなわたくしだって、そこらの埃や小鳥と同じように日々を懸命に生きているのですよ?
流石にそこまで言わなくても良いのでは、なんて口が裂けても言えません。
何十回も言われた言葉ではありますが、やっぱり心が凍りつきました。いつか慣れる日がくるのでしょうか。
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そんなことばっかり考えていたある日、貴方がしにました。
「可哀想に、」
「まだ学生なのにお母さまが亡くなられて……」というのがたぶん、大多数の意見でしょう。
ですが、
「お母さま」という血縁上の関係だけで、心から慕っていたわけではございません。
むしろ、大嫌いで大嫌いで仕方が無いひとでした。わたくしにとって、絶対的な君主でした。
死因は病死。
2週間ぐらい前の朝、突然倒れたのが始まりでした。
毎日意識が無く、心電図の波形が止まったその瞬間も、苦しそうな顔ひとつせず安らかに眠りました。
………今回は大して苦しまず病死ですか。腹が立ちます。わたくしは貴方に何回も何回も傷をつけられたのに。
1回目の人生も同じようにお母さまは安らかに死にました。
ほんとうは、この世の中にあるすべての苦しみを味わいながら死んで欲しかった。
わたくしが受けた、消えたくなるほどの胸の痛みを貴方にもたくさん味わっていただきたかった。
でも、恨みつらみを心の中でぐだぐだ言ったって、貴方は、お母さまはもう戻ってこない。
そんな絶望の中、わたくしは、ある方法を思い付きました。
自ら死んで、また同じ人生を歩んで、お母さまに、この世の中にある全ての苦しみを、地道に味わってもらおう。
この考えを思いついた時、今までも、これからも感じないであろう程の歓喜に震えたものです。
――――――
きっと、正気ではなかったのでしょう。
普通なら、死んだところで時を巻き戻せる訳がない。
でも、わたくしのドロドロとした気持ちを天は見てくれていたのか、何故か繰り返し、巻き戻ることができました。
懐かしいですね。
結局、大嫌いで大嫌いで仕方が無かった貴方にも、今となっては少し、慈しみの感情すら湧いてきます。
冬の冷たい水風呂も。目の前で割れたお皿も。
一生懸命作った料理が、床にボタボタと落とされた光景も。
全てが、すべてが、貴方のモノでした。
そしてわたくしもまた、貴方のモノでした。
なので、わたくしは貴方にまた会いに行きます。
この病院の屋上は…確か5回ぐらい経験したかしら。
もう、自殺も慣れました。お気に入りは飛び降りです。
痛みも、貴方に受けていただく苦しみを考えていたら一瞬です。
そうこうしている内に、もう柵の上に立っていました。
風にふわっとのせられて、わたくしは落ちていきます。
お母さま。
待っててね。
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待ってくださいめちゃ好きです、文章のリアル味最高です、主人公がすごい生きてる…文章の中ですごい生きてる…長くなりそうなので要約しますね、神。