おもいで 一話※百合注意※
「わぁ、綺麗!」
花々がきれいにきれいに並んで、咲き乱れている。
そんなときにおじいちゃんの声が響いて……やさしいおじいちゃんの。
綺麗だね、って笑う。
──これが幻覚なのに気づくまで、多少の時間をかけるけど。
「おーい……おーい」
三葉(みつば)に呼びかけられるまで、その夢から目を覚ませなかった。
「あっ三葉。いつも迷惑かけてごめん」
「ううん、妹を起こすのよりはずっとマシ」
マシ、って言い方をされると、やっぱり手間かけさせちゃったかなとか頭の中でまた変なのがぐるぐる回る。
それを察したように三葉は「まぁまぁ」と私をなだめた。
「冬香(ふゆか)、コーラ好きだったでしょ。冷蔵庫の中あるから元気だしなって。」
とは言ったって、コーラごときで胸騒ぎが終わるくらいの子供の時期はどうやら過ぎ去ったらしい。
「遠慮するよ、いつもわざわざ置いてもらってるから」
「そっかー残念」
水を適当に飲み込むと、オーケーサインを出してみせた。
時計の針はもう6に行きかけで、そろそろ帰らないとなんだか…なんて気がする。
「ちょっとそろそろ帰ろうかな」
残念そうにこちらを見つめる三葉に笑いを作って見せて、そのまま靴を履いた。
じゃあね〜、なんて声がどんどん遠下がっていって、しまいには走る音しか聞こえなくなっていた。
この感情をどうしようか。
私なんかに解けるだろうか。
こんなの、受験よりもっともっと難しい難題だ。
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