おもいで 三話 ※百合注意※
『冬香こたえ〜』
一瞬理解に時間がかかったが、三葉の「よくできました」スタンプのついたプリントを見て、ようやくわかった。
ありがとうと打ち込みたいところだけど、それより急いでてすぐそれを書き写す。
ふう…と一息ついて、ようやく打ち込み始めた私。
『ありがとうできた!』
『あ、よかったよ』
ニコニコの絵文字をつけて送られてきて、なんだかニヤニヤが止まらなくなってしまった。
グッドサインのスタンプを送ると、すぐにベッドに飛び込んだ。
とりあえず三葉のことだから一問は間違えてるだろうけど、ここも三葉が調子悪かった〜とか言ってくれるんだろう。
「冬香〜風呂入ってきて〜」
お母さんもう入ったわよ! という大きい声がドア越しにも聞こえてきて、返事をする気力も失ってきた。
眠い目を少し擦ると、扉を開けてわかってるなんて言う。
「今から入るから邪魔しないで!!」
お母さんをおいやって、さっさと風呂に入る準備をした。
これがいわゆる反抗期というやつなのだろうか。
いつもなら軽くシャワーで済ませるのに、今日はなんとなく浴槽に浸かった。
膝がうごいたことで、チャポンと水の音が鳴った。
この時間がずうっと続けばいいのに。
ふと、なんて思った。
髪をシャンプーで洗うのも、解かすのも、歯を磨くのも、これから布団に入るのも、眠るのも、明日を待つのも、学校の支度をするのも、学校の宿題プリントを解くのも、テストを解くのも、三葉やクラスメイトとコミュニケーションを取るのも、お母さんにただいまを言うのも、全部。
続けばいいのに、あたたかい水に体を浸ける時間がずっと……。
面倒臭いものまるごと、終わらせられたらいいのに………。
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