桜咲き、想いは芽吹き
「ほら、帽子。」
ちっちゃいなぁと思う、ずっと一緒にいたせいかもしれないが。
「美優、ちゃんとランドセル背負っていける?」
「もう私おっきいもん!」
不満げに見上げられる。
「まぁまぁ、手ェ繋いで行こ?な?」
「うん。」
ぴょんぴょん跳ねている、面白いのでほっといたら抱きつかれた。
「うわっ。」
「せぇ伸びない〜。」
「いっぱい食べたら、背ものびるよ。」
妹ってかわいいなあ。
特に面白いとも思わないが、ありがたいことに僕はクラスメイトに恵まれた。
学校のアイドル、桑島綺羅さん。
無個性極まる僕が何ができるでもないが、彼女の後ろで授業が受けられる。
恋をしているわけじゃない、あるいは恋に恋するというやつだ。
告白なんてできるわけもないけれど、男子みんなで色々言ってたいよねということである。
「おはよう!」
「はよ。」
「よーっす!」
「おん。」
有象無象の中に、あの子はいないか…
「あっ。」
「おはよう、陽介くん!」
「おはようございます!」
長い黒髪、細くて綺麗な足、それから何かいい匂いもするような‥
「お姉ちゃんだれ?」
緊張してきょろきょろしていた妹が、彼女には話しかけた。
「私はお兄ちゃんの同級生だよ、仲良くしようね!」
「お兄ちゃんの…」
見るな、見るな妹よ、お兄ちゃんをそんな目で見るな。
「桑島さんだよ、桑島綺羅さん。」
「綺羅お姉ちゃん?」
「よろしくね!」
思えばこの時に、どこにでもあるようなないような物語が動き出したのだ。
「みなさん、ご入学おめでとうございます、これからこの学校で元気よく…」
校長先生が孫のような目で新入生を見ている。
うちのみーちゃん大丈夫かな?
他の子の手を繋いで入場することになったので、どうにも落ち着かない。
「っぶねぇ〜。」
校歌間違えるとこだった。
所で先ほどからうちの子は、元気に校歌を歌っている。
「われらのまなびーやーは~。」
「えらいぞ、みーちゃん。」
「私、お姉ちゃんとお歌歌う!」
「そっかそっか…うん?」
「綺羅お姉ちゃんち遊びに行く!」
「ハイ?」
ある春、僕のどうでもいい日常が大きく動き出すのだった。
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