海の彼方へ
伸ばす気0で笑う
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私は海の近くに住んでいる。
一歩外に出ればもう海の匂いがする、そのぐらいの距離。
近年水中ゴミやらが大きな問題になってるけどこの海は全然そんな事ない。
当たり前のように鮮やかな水色の水が波打ってる。
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私には海奈という双子の姉がいた。
海奈は海が大好きでいつも海の近くに住みたいと言っていた。
その海奈はもういない。
6年前、交通事故でなくなった。
15歳、中学3年生だった。
海奈が亡くなったという知らせを聞いた時一瞬、世界が壊れた気がした。
目に見える世界は何もかも変わってしまい、聞いてた音、かいでた匂い、何もかも違った気がした。
周りの人は大変だったねとか可哀想とか無責任な言葉ばかり言ってきた。
きっと誰もが自分には関係ないと思ってる。
最低だ。
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それから6年。
私はずっと海奈を追い求めていた。
けど見つけられなかった。
海奈の気持ちを理解しようと海の近くに住んでみた。
けどなんにもわかんなかった。
海の近くに住んだところで私はなんとも思わない。
双子でも所詮他人なんだから当たり前。
わからないものはわからない。
人の気持ちなんてそうそう理解できるものじゃない。
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海奈が亡くなる少し前、2人で海に行った。
着いた時にはもう辺りは真っ暗で唯一月が光ってた。
目の前に広がる水が輝いて波打っていた。
何回も、何回も。
私と海奈はただそれを見ていた。
お互い何も言わなかった。
「海ってね、人間みたいなものなんだよ。」
帰る直前、海奈が唐突に言った。
「晴れの日は穏やかに波打つ。大雨の日は波が荒れる。人間も自分に嬉しい事があった時は機嫌がよくなる。嫌な事があった時は泣いたりする。それの繰り返しなんだよ。」
この時は海奈が何を言ってるかよくわからなかった。
この言葉の意味は6年経った今でも正直よくわからない。
けど海奈がわざわざ言ったという事はきっと何か意味がある。
その答えを教えてくれる海奈はもういない。
海はただ穏やかに波打っていた。
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