夏の初め

1 2025/06/22 00:24

海辺からの帰り道にて、私は空を見上げていた。水平線から太陽まで続く青と水色のグラデーションが私を包み込んでくれる。サンダルについている砂を落としながら、自販機で買ったジュースを飲んでいた。

「夏休みも来れるといいね」

友が私に話しかける。

「そうだね。また俺達だけだと面白くないし、他の人も誘えよ」

私は彼の好きな人を知っている。ちょっといじってみたくなった。

「例えば…誰だよ」

「りな、とかさ」

「お前なあ…知ってて言ってるだろ」

「うん」

私の口角が上がる。もっといじってやろう。

「最近、どうなんだよ」

「何がだよ」

「りなとだよ!」

「うーん…」

彼は視線を落とした。そんなに考えることがあるのか。私は彼の返答を待ちながら、ジュースを飲んでいた。空になる頃、彼はやっと口を開いた。

「なんかさ、色々とあんまりなんだよね」

「え?」

予想していた解答とはあまりにも違かった。どういうことなんだ。なにがあんまりなんだ。好きじゃないのか?

私の脳が何を質問しようか迷っていると、彼は続けた。

「勿論、りなの事は好きなんだけど、なんか最近、熱が無くなってきたように感じてさ。」

「あれだけ好きだったのに、変わったな、お前。」

「今までは好きっていうよりかは依存していたんだよ、りなに。」

確かに、言われてみればそうである。彼は彼女という存在に頼っていた。彼女がいるから彼がいるのであって、一時期は親友の私とも遊ばず、彼女と遊んでいた。

「で、俺はいまその依存から脱出したわけ。」

「ふーん…」

お互い、何も話さない時間が続いた。せっかくおもしろそうな話をしようと思ったのに、まさか話の初めから私の予想と違っていたなんて。

「なあ…それってさ…いい事なんだよな?」

「俺はそう思うよ。依存はあんまり良くない関係だしな」

「でもさ、お前は今の状態で満足してるのか?前のお前と、心が満たされてるのはどっちなんだよ」

「それは…」

「しかも、なんか最近のお前、やる気とか、そういうの無いよな」

交差点まで来た。私と彼は帰り道が違うため、ここで彼とは別れることになる

「俺は、お前に情熱そのものを失ってほしくない。よく考えて欲しいんだ。」

私はそれを言い残して、点滅している信号を渡りきった。後ろを振り返ると、彼はぎこちない笑顔で手を振っていた。

一人で帰る道は、少し寒く感じた。まだ太陽は私達を照らし続けていた。

いいねを贈ろう
いいね
1

このトピックは、名前 @IDを設定してる人のみコメントできます → 設定する(かんたんです)
画像・吹き出し

タグ:

トピックも作成してみてください!
トピックを投稿する
その他2025/06/22 00:24:44 [通報] [非表示] フォローする
TTツイートしよう!
TTツイートする

拡散用



まだコメントがありません。最初のコメントを書いてみませんか?
画像・吹き出し
タグ:

トピックも作成してみてください!
トピックを投稿する