とーと事件3章

8 2025/11/03 17:09

第三章 開花の日 ― 能力事件勃発

 ──とーと事件、発生日。

 朝、空が白く霞んでいた。

 風も、鳥も、すべてが静止しているような感覚。

 時間の流れそのものが歪んでいるようだった。

 蓮は無言でその空を見上げた。

 五年前、同じ光景を見た。

 運営が世界を破壊し、八割の人間が消えた朝。

 この瞬間を止めるために、彼は時を超えた。

「……始まる。」

 低く呟く声を、隣のつみきが聞き逃さなかった。

「何が始まるの?」

「……説明する時間がない。とにかく、外を見ろ。」

 つみきがカーテンを開けると、空が“裂けた”。

 白い線が地上へ落ち、光の雨となって降り注ぐ。

 街が光に包まれ、地響きのような悲鳴が響いた。

 ──《とーと事件》、発動。

 通りに出ると、人々の身体から異様な光が溢れていた。

 応力の“覚醒反応”──脳と魂が共鳴して、力が暴発する。

 だが、その力を制御できる者はほとんどいない。

 蓮の記憶では、この日、世界人口の八割が死んだ。

「つみき、離れるな! これから街ごと吹き飛ぶ!」

「なに言って──!」

 つみきの言葉が途切れた瞬間、前方のビルが爆ぜた。

 光の爆発が押し寄せる。

 蓮は反射的に“スキル奪還”を発動し、衝撃波を吸収する。

 空間が一瞬だけ静止した。

「……これが、あんたの力?」

「説明は後だ。逃げるぞ!」

 二人は廃ビルの屋上へと逃げ込み、息を整える。

 下では炎と混線した通信音が響き続けていた。

 世界が一瞬で崩壊していく。

「もう……終わりなの?」

 つみきの声が震える。

「まだだ。まだ救える。今回は、絶対に。」

 蓮は拳を握りしめた。

 その時だった。背後から、優しい声が響いた。

「……あなたたち、無事?」

 振り向くと、瓦礫の間に一人の女性が立っていた。

 淡い桃色の髪を結い、軍用のコートを羽織っている。

 けれどその雰囲気は、どこか“光”を感じるほど柔らかかった。

「誰だ?」

「……第1部隊の、kokoです。

 この区域の避難指揮をしてたんですけど……見ての通り、崩壊してしまって。」

 彼女は微笑みながらも、目の奥は鋭く、現状を正確に把握していた。

 まるで“未来を見ている”ような目だった。

 蓮は息を呑んだ。

 未来で共に戦った仲間──しかし、彼女は今まだ、彼を知らない。

 声をかけたい衝動を抑え、ただ短く答える。

「蓮だ。避難民じゃない。戦える。」

「……そう。じゃあ協力してくれる?

 このビルの下にまだ人がいるの。

 けど、あの光の中を抜けるのは普通じゃ無理。」

 kokoは両手を合わせ、静かに息を吐いた。

「《結界展開》。範囲、三十メートル。」

 瞬間、淡い光が広がり、ビル全体を包み込む。

 降り注ぐ瓦礫や爆風がすべて、見えない壁で止まった。

「……すげぇ、何だこれ」

「空間の歪みを“固定”する結界よ。

 私の応力《界律(かいりつ)》の基本能力。」

 その声には、どこか祈るような優しさがあった。

 だが次の瞬間、彼女の目が青く光る。

「右上──!」

 kokoの体が霞み、次の瞬間、上空から落ちる金属の破片を蹴り砕いていた。

 動きは速すぎて目で追えない。

「……未来視、か。」

「え?」

「いや、なんでもない。ただの勘だ。」

 蓮は目を細めた。

 未来で知っていた通り──kokoは、5秒先の未来を見る能力を持つ。

 けれど今の彼女は、自分の力の本質にまだ気づいていない。

 救出が終わった頃、街はもう影だけになっていた。

 炎が夜空を赤く染め、遠くからは絶えず爆発音が響く。

「……これは、いったい……何なの?」

 つみきの声が震える。

 kokoは小さく息を吐いた。

「運営が動いたのよ。

 “選別”ってやつ。

 強い応力を持てる者だけを残すために、世界を試してる。」

「そんなことのために……!?」

 つみきが叫ぶ。

 蓮は静かに目を閉じた。

 この場面を、彼は五年前にも見た。

 だが今度は違う。kokoも、つみきも、生かしてみせる。

 夜。廃墟の屋上。

 kokoは蓮に毛布を渡しながら、静かに尋ねた。

「……蓮くん、あなた……まるで全部知ってるみたいね。」

 一瞬、心臓が止まる。

 未来の記憶を知られてはいけない。

 それでも、蓮は微笑んだ。

「勘がいいだけさ。」

「……ふふ、そう。なら、信じるわ。

 勘のいい人は、だいたい“生き残る”から。」

 その笑顔が、未来で見たkokoと重なった。

 温かくて、真っ直ぐで、優しい光。

 蓮は静かに夜空を見上げた。

 星の代わりに、無数のデータ光が降り注いでいる。

 ──運営の観測ドローン。

 世界が完全に“支配下”に入った証だ。

「……また始まるな。」

 蓮は呟いた。

 その横で、kokoが空を見上げながら言う。

「でも、まだ終わってない。

 生きてる限り、希望はあるもの。」

 その言葉が、蓮の胸に焼きついた。

 未来を知る彼にとって、それは失われた五年の中で

 唯一、もう一度取り戻したかった“言葉”だった。

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おもしろ2025/11/03 17:09:05 [通報] [非表示] フォローする
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やれたらやるの精神でいいんでだしてほしい


>>1
食べ消しさん出していいんですか?


>>3
ありがたいです


kokoさん領域展開してるやん


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