とーと事件13章
第13章 白銀の来訪者 ― ゆき兎
仲間それぞれの力が覚醒し、蓮たちの士気が最高潮に達した夜。
山脈の上空に、季節外れの白い粒がふわりと舞い落ちてきた。
「雪……?」
食べ消しが手を伸ばして、掌に落ちた結晶を見つめる。
「さっきまで晴れてたよな?」
ぜらちんも眉を寄せて空を見上げる。
「気象操作の能力者…か、また運営の刺客?」
蓮は周囲の気配を探ったが、妙だ。
敵意がない。むしろ——何かが近づいてくる気配なのに、まるで風に紛れるような柔らかさ。
次の瞬間、白い靄がすっと割れた。
そこに立っていたのは、雪の結晶のように透き通る髪と、淡い蒼色の瞳を持つ少女だった。
うさぎのように長い耳飾りをつけ、白いマントをひらりとなびかせる。
「……あなたたちが、蓮たち?」
声は冷たいのに、不思議と優しい。
蓮が前に出ると、少女は静かにうなずいた。
「私は“ゆき兎”。山の上であなたたちをずっと見ていたの」
「監視されてたってことか?」
ガリウムが少しだけ警戒を見せる。
「違うわ。見守っていたのよ。あなたたちが落ちるか、折れるか、立ち上がるか……その全部を」
そして、雪のように淡く微笑んだ。
「もうすぐ“運営四天王”本隊が動く。あなたたちだけじゃ、まだ足りない。だから——私が力になる」
その言葉と同時に、空気の密度が変わった。
少女の周囲に冷気が集中し、雪片が渦巻く。
! ゆき兎の能力・覚醒!
「私の力を見せるわね」
ゆき兎は指を軽く鳴らした。
その瞬間、地面の雪が生命を持ったように立ち上がり、巨大な“雪兎”の形をとった。
「雪を操る……!」
食べ消しが思わず後ずさる。
「それだけじゃないわ」
ゆき兎の身体が淡い光に包まれ、風のような速度で一瞬にして蓮の背後を取る。
「っ!? 速い!?」
ぜらちんが目を見開く。
「身体能力を……百倍に強化してるのか」
蓮はその動きを見切れなかった自分に、思わず冷汗を流した。
「最後にもう一つ——」
ゆき兎は目を閉じた。
次の瞬間、五感すべてが彼女の周囲を満たすように広がった。
「……あなたたちの気配も、呼吸の速度も、心拍も全部わかる。
“五感覚醒”よ。敵を一瞬で見抜いて、対応できる」
その説明を終えると、少女は静かに蓮の目を見た。
「——本当に、あなたたちと一緒に戦いたい」
信頼の証
蓮は答える前に、仲間たちの顔を見た。
ガリウムは腕を組んだまま頷き、食べ消しは興味津々という感じで近付く。
「雪操れるのいいなー! 俺、能力奪えるけど雪は出せねぇし!」
ぜらちんは警戒を解ききらないまま口を開いた。
「理由を教えて。どうして俺らみたいな寄せ集めに?」
ゆき兎は夜空の雪を見上げた。
「……あなたたち、誰一人として見捨てなかった。
仲間を、運命を、自分の可能性を」
そして蓮のほうに視線を戻す。
「特にあなた。蓮。あなたは“死ぬ覚悟”で仲間を逃がそうとした……あれを見て『あの人と一緒に戦いたい』って思ったの」
蓮は照れたように頭を掻くしかなかった。
「……そんな格好いいもんじゃないよ。あれは、ただ必死だっただけだ」
「必死に仲間を守れる人は、誰よりも強いわ」
ゆき兎は静かに手を差し出す。
「よろしくね、蓮。みんな」
その手を、蓮はしっかりと握った。
「こちらこそ。これからよろしく、ゆき兎」
雪原の試練
ゆき兎は仲間になった直後、ある提案をした。
「四天王に挑む前に、私が作る“雪の結界”で訓練をしましょう。
運営はもう動き始めてる。あなたたちはもっと強くなれるはず」
ゆき兎が地面に手を触れると、白銀の世界が広がった。
雪が壁となり、迷宮になり、冷気が敵のように吹き荒れる。
「なんだこれ……!」
ぜらちんは風圧に耐えながら叫んだ。
「この中では、あなたたちの弱点が全部見える。
五感覚醒で全部……教えてあげるわ」
そこから始まった訓練は、想像以上に過酷だった。
ガリウムは重い雪の壁を破壊しながら、体力強化を繰り返し——
食べ消しは雪で作られた仮想敵から能力を奪い、応用力を磨き——
ぜらちんは視界を奪われながら戦い、感覚の精度を上げていった。
蓮もまた、雪の中で自分の限界と向き合う。
ゆき兎は静かに蓮の背を押した。
「あなたは焦らなくていい。レベルが上がれば、必ず“サタン”にも勝てる」
蓮は深く息をつき、拳を握った。
「……ありがとう。必ず強くなる」
新たな光
訓練が終わる頃、雪の結界は静かに消えた。
ゆき兎は新たな仲間たちを見渡して、穏やかに微笑む。
「これで、四天王の一角“アダム”にも対抗できるはず」
蓮たちは頷く。
新たな仲間——ゆき兎。
彼女の力は、これからの戦いで大きな鍵となる。
白銀の風が吹き抜ける中、蓮は空を見上げる。
(待ってろ……アダム。四天王。運営、、、必ず、お前たちを越えてみせる)
やばぁぁい。新キャラは雪うさぎさんでしたね
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