【洋風総選挙小説】異国の地にてさようなら
現地時間で昼下がりの頃。ここはパリのシャン・ド・マルス公園、目の前に聳え立つはエッフェル塔。その下に僕たち2人はいた。
「いやぁ、エッフェル塔って意外と小さいんだねぇ。ね?登張くん?」
「そうですねぇ、朱莉先輩はずっと都会住みだったから、余計にそう感じるでしょうね。周りの建物も綺麗ですよ…あ、あそこに露店ありますよ!何か買いましょうか?」
「さすが登張くん!気が利くねぇ。じゃ、私が好きそうなのを頼むよ!」
「分かりました!じゃ、行ってきます!」
そう言って、僕は露店のほうへと早歩きで向かう。その間に、これまでのことを振り返る。朱莉先輩との関係は数年前から続いており、恋仲とまでは行かないまでも自分なりに上手くいっているつもりだ。でも、朱莉先輩と過ごす日も今日で一区切りつく。朱莉先輩が建築を学ぶためにここに留学するからだ。僕はそれが悲しくて、思わず「一緒についていかせてください」だなんて無理を言ってしまった。「前からフランスに行きたかった」だとか分かりやすい嘘を吐いていたことも含めて、我ながら馬鹿だなと今でも思う。それでもあの人は、最初の三日間限定、完全自費、引っ越し等の手伝いをすることを条件について行かせてくれた。「相変わらず朱莉先輩は…」とかと考えているうちに僕はポテトを二つ買っていて、朱莉先輩のもとに戻っていた。
「戻りましたー、これでよかったですか?」
息を切らしつつ言って、僕はポテトを手渡す。
「ありがと、大正解だよ!お礼に頭を撫でてあげてもいいよ?」
「いいですよ。当然のことをしたまでですから」
本当はめちゃくちゃ撫でてもらいたいなんて言えるはずがない。恋心が募ってしまう。今思えば、ろくに観光ができなかった最初の2日間でさえも2度と味わえないような幸福に満ちていた気がする。
「先輩、ベンチ座りましょうか」
「うん」と先輩は返事をする。ポワポワしてるのに、どこかちゃんとしている。長い髪が嫋やかで艶やかで、胸が熱くなる。昔は一目惚れだったはずなのに、今ではこの人のすべてを愛している。
ベンチに隣り合って座る。しばらく黙って、僕が先に口を開く。辺りの喧騒は耳にまるで入らない。
「先輩、実は、嘘ついてたんです。フランスに行きたかったっていうの嘘なんです。」
「ん?知ってるよ?」
「へ?」
気の抜けた返事をしてしまう。まさか、朱莉先輩が分かっていたとは思わなかった。
「分かってて、ついてきてもらったの。なんでか分かるかなぁ?」
胸が高鳴るが、思わず黙ってしまう。
「……先輩、僕、昔から、初めて出会った時から…」
「ごめんね。今はその言葉に返事はできない。色々、立て込んでるしね。」
先輩の言葉で、僕の告白は途切れてしまった。「嫌われた?」そう思ってしまう。が、先輩は言葉を続ける。
「ずっと、待ってるから。だから、また会ったときに…ね…?」
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