春、凪
春の海は暖かい、波の音は心地よく、夏ほど暑くない。
海が近くにあると、夏は泳いで、泳げないような寒い時期でも、魚を獲ったりして付き合っていく。
「きれいだよ、ほら」
ひらひらと舞う桜を見上げて、手を伸ばす。
「ナツ、寝てんのか?」
布団が少し盛り上がっている。
「な〜つ〜!」
「お兄ちゃん‥」
掛け布団を引っぺがした。
「あったかいぞ、ほら」
まだおねむの妹を連れて朝飯に行く。
「食え!」
「むぐむぐ…」
海のように深い瞳がこっちを見つめ返している。
「おいしい!」
「へへっ!」
朝食を食べ終えて麦茶をコップ半分ほど飲む。
「ナツの目は綺麗だな、お日様みてぇ」
この島では、子供はみんな泳げるようになる。
「凪兄‥」
「ん?」
胸に耳を当てている。
「凪兄のお胸の音」
柔らかい髪を撫でながら、大きくなったなと思う。
「海、好きか?」
「うん!」
「そっか‥」
あの時、ナツが生まれたばかりの頃。
「ナツを、連れてくなぁ!」
「これ、凪!」
祖父が焦った声で呼び止める。
「あっぷ…」
「待ってろ!」
妹を取られてたまるもんかと、手を伸ばした。
「ほんとに、綺麗な青い目だな」
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