ヒーローと巫女さん 第十一話:巫女はいつもみんなの為に、ヒーローもいつもみんなの為に。その2
「手短に済まそう
和解しようじゃないか」
霊夢が峰田と上鳴と接触していた時、耳郎、飯田、緑谷、麗日の四人は霊夢抜きの作戦会議を終えて監視していたビルの前に、全員で立っていたそうして、ビルから悠々と八百万が出てくきた。その時に飯田がそう言った。八百万が質問し返す。
「・・・・・・より具体的に教えてもらっても?」
「もちろんだ。僕達が求めているのは、武力行使を用いない平和的解決。ただそれだけだ」
「轟さんを捕獲することに加担しておいて、よく言うのですね」
「気付かれていたのか。しかし、そちらも爆豪くんのチームの敗北に加担させたのは事実」
その少しの論争の後、また少しの沈黙が訪れる。それを破るように今度は八百万から真剣な顔で話し始める。
「和解については合意"しよう"とは思っていますわ」
「ほう? つまり、少しだけ断ろうとする意志があると?」
「ええ、和解についてではなく、あなた達、いや、そちらの頭脳がどれだけこの試験を理解していて、そこから導き出される和解することの損得について、どれだけの一家言をお持ちであられるかですね。ですから、とりあえず、そちらの頭脳についておしえて貰えばと思いますわ」
「こちらの頭脳か・・・・・・」
飯田は、戦術的行動だけが頭脳の役割ではないことにも念頭をおいて思案する。
(やはり、一番最初に出てくるのは緑谷くんだ。通信方法の提案、同盟の締結など様々なことを行ってくれた。もちろん"僕達のチーム"としての頭脳は間違いなく緑谷くんだろう。しかし耳郎くんのチームを含めるとどうだろう。博麗くんかもしれない。同盟という選択肢の提案、轟くんの捕獲など。こちらも大きなことをしてくれた。しかし、破天荒であり、何より今ここにいない)
そうやってずっと考えていると、八百万が見限ってきた。
「私、基本的にお相手は尊重すると決めてるんですの。だから敬意をこめて批判してあげますわ。今、ここに、そちらの頭脳がいらっしゃるのであれば、皆で話し合いをして決めたり、全員からの支持があって即決されたりするもの。それが出来てさえいない頭脳。そんなお方にこの試験の"一握り"でさえ理解出来ないと思いますわ、いえ、きっとそうですわ」
「・・・・・・」
四人とも、黙るしか無かった。確かにこと同盟は皆等しく、大事なことをやっている。それは、計画の最後のワンピースだったり、皆を纏めたり、案を出したり、個性を応用して通信機器になってくれたり。逆にいえば突出したものなんてなく、頭脳とはっきり言えるほど、知能に大差は無いように思える。しかし八百万が続ける。
「ええ、この試験のプレイヤーである"一握り"の天才達でさえ理解ざ及ばない、ただひたすらに"怪物"と形容すべき人間。それはあなた達四人では理解が出来ない」
その四人の頭の中は疑問と思考で埋まっていた。
「博麗霊夢がいるでしょう。それが私の言う"怪物"ですわ」
全員が沈黙をする。貶されているのかも誉められているのかも判らないし、何故そう言われたのかも判らない。そんな所に噂をすれば影がさすメソッドで、当の本人博麗霊夢が、八百万のいたビルと隣のビルの隙間から、やって来る。
「・・・・・・消去法で和解の交渉中ってところかしら?」
「ええ、私は和解を受け入れる気でいるので、争う理由も無くなりましたし、打ち上げの話の続きでもしましょうか?」
八百万はさっきまでの真剣な表情は何処吹く風、柔らかい表情に見える。
「そうね。でも、やることもあと一つ残ってるの、峰田、上鳴から話を聞いて、そのあと事実確認の為、切島にも念の為話を聞いて、そのあとに」
最後に好きな食べ物を残しておくように、切り札は最後まで伏せておくように、そっと霊夢は笑みを浮かべる。
「あとはこのゲームを壊す。それだけが残っているの。じゃあ私はこれで、あとは和解して打ち上げの話でもやっておいてね。私をつけている葉隠達と一緒に」
制限時間は残り10分。ゲーム開始から30分。残るプレイヤーは耳郎響香、飯田天哉、緑谷出久、麗日お茶子、蛙吹梅雨、芦戸三奈、葉隠透、八百万百。そして博麗霊夢。そして場所は、相澤のいる。バスの中へと移る。
相澤はゲーム開始からの、監視カメラからの視覚情報、ジャージに仕掛けた盗聴器からの聴覚情報を様々なシステムと共に保存、解析していた。だから、一番、この試験で何が起こっているかを理解しているはずなのだ。そして決めていたのだ。生徒には厳しくすると、容赦なくすると。
「このままだと、最下位は決まるが、俺の中の基準的には全員合格か・・・・・・」
正直言って、今年の一年生は豊作だ。そう思いながら、もう全員を合格させる気でいた。だからあとはシステムに任せて、自分は休もうと思っていた。そんな所に
「お疲れ様で。相澤先生?」
博麗霊夢が少し笑ってるやってきた。
「・・・・・・」
「ルール的には"試験"場所に指定は無いし、入試の会場からでちゃ行けなルールも無いわ。それに会場がそこだって誤認させたのはそっちの誘導だし」
「やはり、そこまで」
「"検査"はあの入試の会場だから、私がこれからする行動には、"検査"の成績には値しない。だから、ちょっと狡いことをするわ。一つ質問させてちょうだい。
相澤先生は除籍生徒はもう決めた?」
試験終了まで、あと5分。霊夢は移動に5分使った。あと5分。それだけの短い時間。
「あと5分で、俺が言った除籍させる人物を合格させることが出来ると?」
「誰が 出来ないって?」
霊夢の笑みがいっそう深まる。相澤は
「じゃあ、現在最下位なのは戦闘は少しもせず、計画や戦略も建ててない、そんな峰田実と上鳴電気。除籍するならその二人だ。だが、助ける方をどちらかに絞れ」
(俺が見た限り、評価的には細部までしっかりと喋ってくれた峰田の方が成績は高い。だから、本当に最下位なのは上鳴。あと最下位の候補でいえばもちろん轟のチームのメンバー。だが、そいつらは八百万の指通りどころかそれ以上に働いた。任務を、命令を、忠実にこなすのもヒーローに与えられた役割の一つだ)
「・・・・・・・・・・・・そう、じゃあ
二人とも助ける。
そもそも、私が相澤先生の命令に従う道理は無いし、情報を聞きにきたのが第一の目標だし」
「生徒が先生に思いっきし背くか」
「いや、生徒に物事を教える先生と、先生からの期待に応える生徒という対等な非物質的取引。それが私が信じてる事実。だから、私は相澤先生に情報を教えてもらった。次は私が相澤先生の期待に応える手番ってだけ」
「なるほどな」
相澤は適当な返答をして時刻を確認して逆算すると残り3分。本当にそうなるのだろうかという思いを持ちつつその時を期待する。
「じゃあ。少しでも期待に添えるよう。私がこれからどうするか教えてあげるわ。
何もしない。
言い換えれば
タイムアップ勝ち」
「面白い、見せてもらおうじゃないか」
刻一刻と時間は過ぎて行く。
ついに、相澤はマイクに手をかけ、そう宣言する。
「終了
全員、試験会場直前の集合場所に整列」

