嗤うトラウマ
小さい頃の話、幼き私は少々荒っぽい性格で他の子を殴ったりダメだと言うところに行ったりガキ大将ポジションだった。そんな私にも付いてきてくれる子がいた。その子は華と言って大人しくとても可愛らしかった事だけは覚えている。ただ少し不気味な点もあった。華はカマキリやバッタを踏み潰していたんだ。蟻などは分かるけどカマキリを踏み潰す、ただ虫嫌いな子がする行動とは思えない。
不気味なところは華は私に怒鳴られても理不尽にキレられてもニコニコとしていた。昔は優しい奴としか考えていなかったが今思えば少し不気味だなと思う。だって殴ったり蹴ったりしてもずっとニコニコしていたんだ。髪の毛を引っ張っても刺してしまっても。幼い頃はハサミを護身用としてずっと持っていた。イライラすると木々や草花を切りつけていた。ある日大好きな玩具を無理やり取られた私はイライラしていた。一人でベンチに座っていた時、華が私の近くにやって来たんだ。華の事を強く憎んでいた私。華は皆に愛されていた。それがとても悔しかった...んだろう。この世から消したいと思うほどに。その時の私はチャンスだと思ったんだ。
(華が、華が今やって来たのが悪いんだ。)
自分にそう言い聞かせてハサミで華を刺してしまった。華は手を抑えて驚いたような顔をしているのを見てスッキリしたのかもっともっと刺した。何度刺して華の手から血が吹き出て。華は少し眉間にシワを寄せ痛そうにしていたが気にしなかったのか。でもすぐに先生がやってきて叱られた。それで我に返り凄い罪悪感に狩られた。その間も華はキョトンとした顔をしていた。他の子達が華を取り囲み話しかけて手当をしてあげていたが華はずっと驚くような顔をしていた。
あれから何年も経った。虐めていた本人は忘れると言っていたが罪悪感から忘れられずにいる。華とは大学までずっと一緒だったからあの日のことを忘れたくても忘れられない。華といると手の傷がどうしても目に入ってしまう。それを見て華はクスクスと笑っていた。もしかしたら私に
「あなたに付けられた傷、一生残って消えないよ。あなたのせいだ」
と思っているのだろうか。いつか復讐として刺されそうで怖かった。華の近くでビクビクしながら過ごしていたっけ。でもそれももう終わり、私は遠くの方へと引っ越した。新しい就職先が違う県だからだ。
私は過去のトラウマと忘れたい人から離れられる。引っ越しが決まったときはそれしか考えられなかった。私は新しい家で荷造りを終えてゆっくりしていた。少し不安な気持ちを抱えながら、もし華が追いかけてきたらどうしよう。それが怖くて仕方なかった。そう言えば母が家を出る時なにか言っていたが忘れてしまった。
「そう言えばあんた☓☓☓☓☓☓☓」
前は離れられる事しか考えていなかったから母の言うことなんてしっかり聞いていなかった。今思えば大事なことだった気がする。だがどうしても思い出せない。するとインターホンがなった。なんだろうか、お隣さんかな?玄関扉を開けるとそこには見知った顔があった。呼吸がどんどんしづらくなる。そこには離れたくて忘れたい人華がいた。あぁ思い出した。母が言っていた言葉あれは
「あんた華ちゃんとお家隣同士になったんだね」
ちゃんと聞いておけばよかった。私はもうこの人から離れることは出来ないのだろうか。
「これからもよろしくね、心ちゃん」

