また友情小説的な
「ねえ、どこ行くの?」
彼女の背中に問う。
「海」
振り向かず、彼女は短く言った。
彼女の手には、卒業証書が握られている。先程式を終えたばかりで、制服にはまだ卒業のリボンも付いている。
そういえば、能登さんが行く高校知らないや。
ふと思う。
「能登さ…」
声をかけかけて、右手の青に目を奪われた。
「海だ」
「海だねえ」
彼女が面白そうに笑う。
「下りてみようよ」
※
ざくざくと、砂浜を歩く彼女の音と私の音が混ざり合う。潮風が頰を撫で、さざ波の音を耳に運ぶ。
彼女はなにも言わない。
と、急に彼女が走り出した。
長い髪が風にあおられて広がる。制服のスカートが揺れる。白い脚が砂浜を駆ける。
「あ」
なんだか、彼女がこのままどこかへ行ってしまうような気がして。
「能登さん…!」
半分悲鳴のような声が出た。
彼女が振り返った。
「あのさあ!」
彼女の声が波風に乗って聞こえた。
「なに?」
「私、留学するんだ!」
ひゅっ、と喉がなった。
「え」
「君には、言っておきたくて」
声が少し小さくなった。
「 」
行かないで。
そんなこと言わない。
言わない
「頑張ってね」
彼女は少し意外そうな顔をしてから
「ありがとう」
笑っていた。
いいねを贈ろう
いいね
3
コメントしよう!
タグ: 友情小説的
トピックも作成してみてください!
トピックを投稿する