友情小説的な
私はそっとため息をついた。
彼女と約束したこの場所。私たちの約束。
『知ってる?クローバーの花言葉』
珍しい五つ葉のクローバーを見つけて、私に笑いかける彼女。
『知らない』
体の中で、声が反響して聞こえた。
『約束』
彼女が笑う。白いワンピースが似合う彼女。触れれば消えそうなほど、儚げで。
『だからね、約束』
『何の?』
『いろいろ』
彼女が私の手をとった。私の手のひらに、クローバーを握らせる。
『約束だよ』
私はもう一度ため息をついた。あのクローバーは今はもうないけれど、私は毎年ここに戻ってくる。
「約束、だから」
足元にたくさんのクローバーとシロツメクサ。私はそれらを潰さないようにしゃがみこんだ。
『宝探しみたいだよね』
彼女はいつでも笑っていた。最後の試合も、大好きだった先生が異動になった時も、卒業式も。あの時だってそうだ。
『じゃあね』
彼女は晴れやかな表情で笑っていた。屋上のフェンス越しに見るその笑顔は、息を飲むほど綺麗で。私は落ちていく彼女を見ていることしかできなかった。
指先に土がつく。あの時は汚れるのが嫌で探すのを躊躇していた私。彼女が見つけて、嬉しそうに笑うのを見ているだけで良かった。でも、今は彼女はいないから。
『コツはね、上から見渡してみることなの。一つ一つかき分けて探してても意外と見つからないんだよ』
私はそんなことできない。できないから、一つ一つ探すしかないの。
「あ」
『知ってる?クローバーの花言葉』
彼女の笑顔が、見えた気がした。
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いえいえ(*´ω`*)
はるたみ先輩は絵も描けて小説も書けるんですね!(((呼び方どうした