急展開
保健室のドアが開く。
「せんせー、怪我したあ」
この声は女子だろうか。明るい可愛らしい声だった。
「お前…またかよ」
先生が大きくため息をついた。
「こっちこい」
「はーい」
「そこ座ってろ」
薄い仕切りの向こう側で先生とやりとりをするのが聞こえた。
「あっ消毒取るから待ってろよ」
「うん」
先生が席を立つ音がした。
少し離れた棚の中を漁る音が聞こえる。
かたっ、とすぐそこで席を立つ小さな音がした。
あ、と思うより先に仕切りの向こうから顔を出した彼女と目が合う。
「…ぁ」
声にならない声が出て、私は彼女と見つめあったまま動けなかった。
「おい、どこ覗いてんだよ」
先生が向こうから彼女に声をかける。
「こっちこい」
「えー」
「消毒してやるから」
心臓がうるさかった。今までにない速さで脈打つそれを止める術が分からない。
「………ねえ、あの子教室行ってないの?」
彼女が声を低くして言う声が聞こえた。
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