#6 デド
長い長い3分だった。
3分後デドが立ち去る時に鳴る特有の甲高い音が聞こえ、私は初めて呼吸をする赤子のように、持久走を終えた時のように、ただはいばらになっていただけなのに呼吸するのが大変だった。
それほど緊張していたのだ。
“デドの行方が不明です。ジュマラーに帰ったと見られます。全館のブレーカーを復活させます。各自無線機の電源を入れなさい。”
ジュマラーとはデドの住んでいる巣というか世界を表した名前のことで、どこにあるかなど詳しいことはわかっていない。
もちろん、ジュマラーを確認する為にデドが歩き回っているところを行く研究者なんていない。そんなことしたら怖いもの知らずも良いところだ。
緊急事態用の放送が流れて、急に施設内に生気が戻ったような気がした。
私は急いで無線機の電源を入れ直すと周囲の独立電化製品の電源も入れ直した。
「先輩、、!」
後ろから声がして振り返るとルームメイトである後輩のカイがいた。
「デドの出現ってこんなに怖いんですね。」
「そっか、先月入隊したばっかりだもんね。先月はデドの出現無かったし。」
「そうなんです。」
カイは無線機をポケットから取り出すと電源をつけた。
「あの…、先輩。」
「うん?」
カイは無線機を落とした。手が震えている。
「どうしたの?デドのこと?」
「いっいえ、なんでもないです!」
「そう?なんかあったら誰でもいいから言うんだよ、」
「はい。ありがとうございます!」
カイにしては空元気すぎた。
何か言いたいことがあるのだろうか。
それも簡単には言いにくいこと。
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